医療情報配信のニューウェーブ

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去る6月末から、米国のトップブランド医療機関であるMayoClinic は、セリアック病 の患者に対してTwitterで最新の研究成果など情報配信を開始した。MayoClinicはこれまでもブログ、Facebook、YouTube専門チャネル などを使ってセリアック病に関するビデオやオーディオクリップを配信してきたが、セリアック病患者に対し、Twitterで一層きめ細かい情報提供活動をしていく予定。

MayoClinicでは、Twitter配信した情報に対するユーザー行動を見極め、その情報を再配信した患者ユーザーなど数名を選び出した上で、さらに詳しいセリアック病研究に関する専門情報(従来は専門家だけに配信していた情報)を配信するようだ。この専門情報については、一般公開と同時に、これら選出された患者ユーザーがブログなどで発表することを許可する。

まだ不明な点も残すが、今回のMayoClinicの新しいチャレンジは、従来の医療情報配信方法を根底的に変える可能性を孕んでいると思う。まず第一に、今回のMayoClinicのセリアック病情報配信が、ターゲティングを意識したものであることに注目したい。従来の医療情報配信は、不特定多数に対し一般的な医療情報を提供するものであり、特定の層に対する専門的な情報配信ではなかった。つまり従来の方法は多分にマスメディア的であり、ネットの特性を活かした情報配信ではないのである。それに対し、今回のMayoClinicのTwitterでの情報配信は、「セリアック病の患者」というターゲットを明確にした情報配信である。

第二に、「セリアック病の患者」というターゲットをさらに「情報ニーズ」によってセグメント(細分化)しようという意図が見られる。同じ病気の患者であっても、より専門的な情報を求める人もあれば、一般的な情報で満足する人もいる。今回MayoClinicでは、Twitter情報配信に対するユーザー行動から情報ニーズを選別し、特定セグメントに対しては一層専門的な情報、それも本来は非公開扱いしてきたような情報まで提供しているのである。

このようにMayoClinicの取り組みは従来にない先進的なものであるが、では、これをさらに突き詰めていくとどうなるのだろうか。おそらく「患者個人の疾患、症状、情報ニーズに徹底的にカスタマイズされた情報配信」ということになるだろう。つまりパーソナル医療などと呼ばれている方向性を持つことになるはずだ。そうなるとPHR、遺伝子解析など他のサービスとバンドリングされる可能性もあるだろう。一口に医療情報提供といっても、まだ無限の可能性があるのだ

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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