バーティカル検索エンジンの現在

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TOBYO事典は世界初の「闘病体験のバーティカル検索エンジン」である。まだテスト版段階ではあるが、今後これを一層精度の高い使いやすいものへと改良していくことが、TOBYOプロジェクトの中でも優先順位の高い仕事だと考えている。

ところが残念なことにバーティカル検索エンジンというもの自体が、日本ではまだ認知が低いのである。最近ようやく、求人情報や不動産情報のバーティカル検索サービスが登場してきているが、米国の状況とはまったく比較にならないほど数少ないのである。医療情報のバーティカル検索エンジンを見ても、米国では掃いて捨てるほど数多く存在し、それぞれ特色を出そうと競争している。TOBYOの場合は、医療情報と言うよりも闘病体験にフォーカスしているのだが、日本でも医療情報のバーティカル検索エンジンがどんどん登場してきてほしいものだ。

だが、この日本ではバーティカル検索エンジンが「マイナーな存在」であるためだろうが、とんでもない誤解を与えてしまうこともあるようだ。GoogleやYahoo!などの汎用検索エンジンに疑念を持つような人は少ないだろうが、特定分野特化型であるバーティカル検索エンジンに対しては、著作権や果ては「無断リンク」にいたるまで、プリミティブな疑念や猜疑心の対象となりやすいようだ。これは非常に残念なことだ。

たしかに、従来、検索エンジン自体が日本の著作権法ではグレーゾーンに置かれ、堂々と国内にサーバを設置できず、わざわざサーバを海外に設置するような中途半端な立場に甘んじてきた。だがこれも、ようやく改正著作権法の成立で合法的であることがはっきりしたのは良いのだが、一般にはこのような事実がまだ浸透していない。というよりも、そもそも検索エンジンが基本的にどのようにワークしているかを知っている人は少ない。GoogleやYahoo!は、あまりにも日常的に使われているが故に「存在することが当たり前」と認識されており、かえってその仕組みや原理を知る動機が一般ユーザーにはない。

TOBYOは、昨年8月に国立国会図書館データベースナビゲーションサービスにも登録され、れっきとした闘病体験のバーティカル検索エンジンとして認知されているのだが、残念ながら、まだまだ一般的な認知を獲得するに至っていない。

だが、TOBYOの問題だけでなく、日本におけるバーティカル検索エンジンの絶対的な量的不足という問題があり、これは法整備の遅れと無関係ではないだろう。改正著作権法でようやく検索エンジンのキャッシュ取得や保存が認められたが、まだフェアユースの概念は確立されておらず、バーティカル検索エンジンなどをどんどん開発するための環境は不十分であるといわねばならない。またユーザーのウェブ認識も、残念ながらいまだに「無断リンク」を問題にするような段階にとどまっている。これでは日本のウェブは、ますます世界から遅れて行ってしまうのではないか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


バーティカル検索エンジンの現在” への1件のコメント

  1. ヘルスアラートというサイトがあります。

    http://www.healthalert.jp/

    ”独自の検索エンジンにより、病気の症状・医療のキーワードから、それにまつわる記事やブログを検索して情報を提供することを柱としています。”

    http://www.healthalert.jp/info/help.html

    との説明があり、症状からも検索できるというのは、Verticalといえるのでは?

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