NHK「物理学者 がんを見つめる 戸塚洋二 最期の挑戦」を見る

昨夜、NHK総合で次期ノーベル賞最有力候補と目されながら、昨夏がんで亡くなった戸塚洋二さんのドキュメンタリを見た。既にブログや本によって、晩年の戸塚さんの闘病についてはおよそのことは知っていたとはいえ、このドキュメンタリを見て、新たに発見したことも多かった。非常に良くできたドキュメンタリだと思う。

穏やかな日常時間、とでも言えば良いのだろうか。戸塚さんのブログエントリに書かれた事々が、それら時間の中に淡々と配列され、流れだし、そして同時に宇宙論、実験プロジェクト、仏教、庭の草花、闘病などが渾然と分かちがたく提示されている。押し付けがましいストーリーでも大仰なテーマでもなく、ただ穏やかな時間の中に宇宙から草花までが存在するような、そんな戸塚洋二さんの人生の提示のされ方に、好感を持ったのである。

実は二月ほど前に、NHKの方が当方にお見えになり、このドキュメンタリ制作に関する取材を受けたことがあった。不覚にも、その時はまだ戸塚さんのことを、あまりよく存じ上げているとは言えなかったのであるが、NHKの方から説明を受けて、特に戸塚さんが生前構想されていた「闘病体験データベース」の話に強く惹かれたのである。そして戸塚さんのブログを読む中で、それまであまり重視していなかったこの「データベース」の問題を、深く考えるようになった。なぜならTOBYOが目指している方向と、戸塚さんのデータベース構想はかなり共通する問題意識を持っていると直感したからだ。

以来ここしばらく、戸塚洋二さんに触発された考察の断片を書いてきたわけだが、昨日のエントリで一応のまとめができたのではないかと思う。今後、TOBYOは従来路線の変更をして行くだろうが、それは端的に言って戸塚構想を実現する方向になるだろう。闘病ユニバースを自己完結的な閉域としてはならず、医療界など他のユニバースとの相互コラボレーションを生み出すような「マルチバース」(多元宇宙)が必要だと考えている。その第一歩として、まず医療界に対する提案をはじめたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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