「医療情報の権利」宣言

HealthDataRights

今週月曜日(6月22日)、米国でHealthDataRights.orgのサイトが立ち上げられ、そのトップページに「医療情報の権利宣言」が掲げられた。この「権利宣言」は、個人医療情報について、人々が持つべき次の四つの基本的権利を宣言している。これを読みながら、「Health2.0ムーブメントは、明らかに次のステージに移行した」と思った。この「宣言」は、今後のHIT(医療情報技術)の進路に、きわめて大きな影響を与えることになるだろう。

  • われわれ自身の医療情報に対する権利
  • それぞれの医療情報要素のソースを知る権利
  • われわれ個人の医療情報の完全なコピーを、遅滞なく、最小経費もしくは無料で手に入れる権利。もしも情報が計算可能な形式で存在するなら、その形式で入手できなければならない。
  • われわれが適当と考える他人と医療情報をシェアする権利

サイトの「ブログロール」ページには「HealthDataRights.orgは集合知のパワーを必要としている」と書かれ、権利宣言賛同者の多数のブログが掲出されており、また賛同者のページでは260人の個人賛同者とGoogle、MicroSoftをはじめ賛同企業19社が名を連ねている。
ざっと顔ぶれを見てみると、Health2.0ムーブメントの中心的役割を果たしているマシュー・ホルトやデビッド・キッベ、Google Healthのミシー・クラスナーとロイ・ザイガー、Health Vaultのピーター・ニューパート、PatientsLikeMeのジェームズ・ヘイウッド、そしてIT業界からはアダム・ボスワース、エスター・ダイソン、ティム・オライリーなど豪華な顔ぶれがそろっている。

中でもトップページ「ブログロール」の筆頭に置かれたアダム・ボスワース氏のブログ「Adam Bosworth’s Weblog」が注目される。アダム・ボスワース氏は言うまでもなくGoogle Healthの前開発責任者であり、以前から当方も注目してきたのだが、Googleを辞去してのち、ここしばらく表立った活動をしていなかった。だが、今回の「権利宣言」ではどうやら中心的な役割を果たしているようで、その健在ぶりがわかって非常にうれしい。22日付NewYorkTimesは、記事「A Push for the Wired Patient’s Bill of Rights」で早速この「権利宣言」を報じているが、アダム・ボスワースの発言をメインに取り上げて紹介している。

先週、「シェアする権利」でジェームズ・ヘイウッド氏の主張する「医療情報共有の権利」について紹介したばかりだが、このような形で「個人医療情報に対する権利」として、今後の医療情報をめぐる立法や行政措置に向けて、先行的な働きかけを行うのは非常に賢明なやり方だと思う。というのは、これらについて、ともすれば「プライバシー、セキュリティ、安全性」という旧来の紋切型を切り出し、「権利」よりも「禁止、統制」という側面で医療情報を扱う古い考え方がいまだに跋扈しているからだ。これでは医療情報をデジタル化して活用するための「情報の流動性」を確保することはできず、コストダウンや効率化の恩恵をいつまでたっても享受できないのだ。日本でもいまだに「HIPAA」(Health Insurance Portability and Accountability Act)を金科玉条視する向きもあるようだが、アダム・ボスワース氏も述べているように、「HIPAA」は医療情報のデジタル化ということを想定していない時代に作られた法律であり、明らかにすでに時代遅れになっているのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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