日本のHealth2.0経済圏の創造へ向けて

昨日、ある大学医学部の先生からメールを頂戴した。見ると、TOBYOプロジェクトが事業としてどのように持続していくのかについて、率直な感想や質問が書かれていた。たとえばTOBYOに広告バナーが貼られていないのは清々しいが、一体、売上はどうなっているのかなど、まことにごもっともなご質問である。実はこのような質問は、これまで様々な方々からしばしば頂戴している。中には、真剣に深く心配までして下さる方もおられ、恐縮の至りである。

TOBYOのビジネスモデルについて、このブログでは何度か考え方や方向性は述べてきたのだが、具体的なディテールまで説明したことはなかった。構想はいくつもあり検討も進めてはきたのだが、いかんせん「いまだ機は熟さず」という思いが先に立ち、計画を立案し行動するまでには至らなかった。ではいつになったら「機が熟す」のかと言えば、収録闘病サイト数が1万5千サイトを超え、バーティカル検索エンジンで全文検索できるサイトが1万サイト以上になった時だと決めていた。そしてようやく最近になって、これらの条件はクリアされたのである。すなわち機は熟した。いよいよビジネスモデル構築へ向け本格的に動き出す時だが、それに関連して次のようなことを考えている。

端的に言って、日本で消費者対象の医療ベンチャーを起こすのは容易ではない。日本の医療市場には規制が多く自由度は低い。私たちのようなアウトサイダーの目から見ると、日本の医療は非常に内部閉塞性の強い領域に見えるのである。つまりこのような現状を見る限り、日本医療はベンチャー企業の生存適所とは言いにくいだろう。また、医療や闘病というテーマはどちらかと言えば「地味」なテーマに属し、サイトがいきなり巨大アクセスを獲得して爆発的にブレークするようなことも起こらないと思う。しかし一方では、医療とそれに関連するサービスは、人間にとって絶対的に必要不可欠なものである。つまり「絶対的なニーズ」が存在する市場なのだ。この「絶対的なニーズがありながら、ベンチャー企業の存続が難しい」という矛盾した市場状況をどのように見るべきか。ここが大きなポイントだと思う。

まずやるべきことは、ベンチャー企業にとっての生存環境を変えることだろうが、そのことは医療における規制緩和など医療改革を進めることを意味する。他の市場とは異なり、医療ベンチャー企業にとっては「改革なくして生存なし」ということが極めてはっきりしている。だから、日本における医療ベンチャーは、最初から「日本の医療を変える」という改革者の方向性を持つことを運命づけられているはずなのだ。逆に医療が変わらなければ、医療ベンチャーが生存していくことはできないだろう。

結論から言えば、「日本の医療を変える」という志を持つベンチャー企業が、コラボレーションのための緩いアソシエーションを作り出し、相互が発展するための経済圏を共同して作っていくことが必要だと思う。それをたとえば「Health2.0経済圏」と呼ぶとして、そこへエスタブリッシュメント側からも資金、人、知恵、情報が集まるような仕組みを作らなければならない。もちろん自立した企業の自由な経済活動がベースになるべきだが、「日本の医療を変える」ことが自分たちの生存与件であることを認識すれば、コラボレーションを進めることは不自然ではないだろう。米国のHealth2.0ムーブメントでも、ベンチャー企業支援のためのプロジェクトが既に立ちあげられているが、このあたりもこれから研究すべきだろう。

「日本の医療を変える」との旗印の下に、エスタブリッシュメントの関係者の皆さんと医療ベンチャーをブリッジするプロジェクト構想は、実はもう動き始めている。まだ詳細をお伝えすることはできないが、近々に、当方から私たちと志を共有していただける企業の方々に、お声掛けを開始したいと考えている。その節はぜひよろしくお願いします。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


日本のHealth2.0経済圏の創造へ向けて” への1件のコメント

  1. SMSの山中と申します。ブログ、楽しく拝見しています。勉強になります。

    「日本の医療を変える」ベンチャーのコラボレーション、大いに共感、共鳴するところがございます。私も、仲間の輪に入れていただければ、ありがたいです。

    三宅様のますますのご活躍と、「TOBYO」サイトの発展を、祈念しております。

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