「よりパーソナルな医療」へ向かう消費者ニーズ

Data0905

雑誌「the Journal of General Internal Medicine」6月号に、PHRに関する消費者パーセプションを探る調査結果が発表された。この調査は、ハーバード大学、べス・イスラエル病院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、MITなどの専門家によって、全米4ヵ所8グループのフォーカスグループインタビューとして実施された。

調査結果で明らかにされた消費者ニーズを要約すると、次のフレーズになるという。

「私は、この私のことを知っているコンピュータが欲しい」

また、医学的文献をはじめとする医療情報、あるいは今日の医療情報システムが提供している製品やサービスにおいて、最も広範囲に欠落しているのは「普通の人々(regular people)への洞察」であるとしている。さらに興味深い結果として、次の五点が指摘されている。

  1. ほとんどの患者は、彼らの医療情報へのフルアクセスを求めている
  2. 人々は、医療情報を遠隔利用できることの利便性を認識しており、この利便性とプライバシー不安の釣り合いを取ろうとしている。健康者は慢性疾患患者よりも、プライバシー不安を語る者が多い。
  3. 患者は、将来、コンピュータがセルフケアを促進してくれることを望んでいる。
  4. 患者は、彼ら自身を見守ってくれるような新しい技術を望んでいる。(例:環境要因をモニターするスマートホーム)
  5. 患者は「真にパーソナルなコンピュータ」の登場を心に描いている

以上で「コンピュータ」と述べられているのは、おそらく「医療情報システム」のことと解釈してよいだろう。これらの結果を見て、総じて「自分にフィットする、パーソナルな医療」についての情報やケアへと、患者・消費者のニーズが向かっていると言えよう。

今後の医療は、ますます患者・消費者を主体とするサービスへ移行していくだろう。患者・消費者は「プロフェッショナルから命令される医療」ではなく、個人に特化した医療情報システムを使いこなし、医療者などプロフェッショナルをコーチやアドバイザリースタッフとして起用し、できれば「セルフケア」など、自分でできることは自分で解決したいと考えている。だが、現在の医療および医療情報システムに決定的に欠落しているものは、このような「普通の人々」のニーズに対する洞察であり対応である。

医療情報技術は、プロフェッショナルの効率を高めるだけでなく、一方では、患者・消費者のプロフェッショナル依存度を低め、自立を促進する力でもある。従来スキームを壊し、患者・消費者主体の新しい医療を作る力なのだ。そんなことを、この調査結果を読んで改めて考えた。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>