闘病データ管理ツール

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先日のエントリで、インターネットから大量のデータを収集し、統計的に分析した上で自らの治療を選択した闘病者の例を紹介した。この例が示すように、闘病に関連するデータの収集と活用は、闘病における非常に重要な活動なのである。このほかにも闘病者は、医療費用、医療保険、各種申請、食事、薬服用など、闘病に伴う多数のデータを管理をする必要がある。日記形式の闘病記もそれらを記録するツールの一つだが、数値表現できるデータは、やはり表やグラフで管理するほうが便利だ。

上図はあるクローン病患者の闘病ブログなのだが、食事、腹痛、薬服用、体温、体重、血圧、排便状況が、表とグラフで細部まで克明に記録されている。この患者は、この記録を医師と共有しているようだ。疾患によっても違うだろうが、一般に糖尿病や高血圧症など慢性疾患の闘病には、このようなデイリーの継続した自己データ記録が大切になる。

ところが従来の汎用ブログサービスでは、もちろん日記形式の「闘病記」は書くことはできたのだが、データ管理ツールはサポートしていなかった。「データ管理」とは言っても、そんな高度なツールは必要ない。シンプルな表・グラフ機能があれば充分だろう。

これまで「闘病記」といえば、そのストーリーや患者キャラクターなど「物語性」ばかりが注目されてきた。だが、闘病体験の価値をそのような「物語性」に矮小化する必要はなく、むしろそのデータ価値を最大限に活用することのほうが重要だ。なぜなら、「感動をもらう」ことよりも、「病気を治す」ことにこそプライオリティを置くべきだからだ。

考えてみると「闘病体験」というものは、ある意味では誤解されやすいものなのかも知れない。われわれ健康者の目から見ると、それは幾多の困難を乗り越える感動ストーリーと見えがちなのだ。だが当事者である闘病者の目から見ると、まったく様相は違うはずだ。闘病者のニーズは「この病気を治したい」という一点にあり、他の闘病者の体験はそのために学ぶ事例であり、医療選択に必要な貴重な比較データなのである。

このように、以前から闘病体験のデータ的側面にもっと注目すべきだと考えてきたのだが、そのためには、闘病者が簡単に数値データを表・グラフにまとめられるツールが必要だ。オンライフを筆頭に、新しい意欲的な闘病専門プラットフォームが登場してきているので、今後、こんなツールの開発をぜひ期待したいものだ。これらは汎用ブログサービスとの差別化となり、ユーザーの利用価値を高めることになるばかりか、いずれPHRへと進化していくはずである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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