闘病ユニバースの可視化

tenmon_nen

今年は「世界天文年」の年らしい。たまたま、あるブログに貼られていたキャンペーンバナーを目にし、ようやく「世界天文年2009」の存在を知った次第だ。キャンペーンビデオもYouTube で見ることができる。ところでこのキャンペーンバナーだが、なんとなくTOBYOのシンボルイメージに似てるし、偶然とはいえ「闘病ユニバース」という考え方にも通じるところがある。

そのTOBYOだが、収録闘病サイトが14,000件を超えた。これで一応「国内最大級の闘病体験データベース」と言えるところまで来たわけだが、今後さらに収集を続けていきたい。これら多数の闘病サイトを収集整理する過程で、ウェブ上の闘病体験についてさまざまなことが徐々にわかってきた。たとえば、闘病体験を書きやすい疾患と書きにくい疾患があるらしい、ということである。おそらく患者数では最大であるはずの2型糖尿病だが、その闘病サイト数はむしろ少ない方だ。2型糖尿病の10分の1程度の患者数である1型糖尿病のサイトの方が、かえって多いくらいだ。ではなぜ1型が書きやすく、2型が書きにくいのか。このあたりは謎だが、なんとなくわかるような気もする。

また全体として、メンタル系疾患の闘病サイトの増加ぶりが目を引くのだが、これは現代日本社会をある意味で象徴しているのかもしれない。近著「貧困と思想」(吉本隆明)の中で、「19世紀産業革命期における象徴疾患が結核であるとすれば、現代のそれはうつ病などの精神疾患である」と吉本が述べていたことを思い出した。うつ病などは「時代を象徴する病気」と言えるのだろうが、「がん」に比べると社会的関心は低く対策も遅れているように見える。このあたりのギャップが気になる。

TOBYOプロジェクトによる闘病ユニバースの可視化が進むにつれ、現代日本の疾患構造みたいなものが徐々に姿を見せてきている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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