Health2.0論の新展開

Health2.0コンファレンス主催者であるマシュー・ホルト氏が、新しいHealth2.0論スライドを公開した。これは、HHS(米国社会保険福祉省)のNCVHS(National Committee on Vital and Health Statistics)およびAHRQ(Agency for Health Research and Quality)の会合でプレゼンテーションされたものである。

プレゼンテーションの相手が医療統計などに関わるセクションであるためか、医療統計のデータソースというアングルからHealth2.0を捉えているところに、いささか違和感を覚える。やはり従来と同じく、冒頭部分はWeb2.0から説き起こされているのだが、これも現在ではいささか古色蒼然という感もある。しかし一方では、これまでのHealth2.0論にはなかった新しいアイデアもいくつか散見される。

たとえば「検索とコミュニティ」という二点でHealth2.0を大胆に整理しようとしているのだが、たしかに現状のHealth2.0サービスの肝を考えると、この二点に集約されるのかも知れない。だがたとえば「検索」を考えてみると、医療情報の検索サービスはパーソナルな情報ニーズに対応しながら、なおかつロングテールまで見渡せるものでなければならないが、これらは汎用検索エンジンでは対応が困難である。一方、医療コミュニティの場合、治験など医学調査データ収集に活用できる点が、他の一般コミュニティと違うところだろう。

このスライドを見ながら考えたのは、「検索とコミュニティ」というポイントがあるとして、それらに対するニーズは他の分野と医療分野とではかなり違うのではないかということだ。そのニーズの差異や特殊性にどのように着目するかが、サービス開発の最大の課題だと思う。

現在、闘病体験だけに特化した検索エンジン「TOBYO事典」の開発を続けているが、最終的にはGoogleやYahoo!など汎用検索エンジンと一味違うものを提供したい。また闘病サイトのライフサイクルなどを考えて行くと、どうやら「患者一般」とか「闘病者一般」とかのような、ある一定のボリュームを大雑把に想定した固定的な括りでは、本当のユーザー像を捉えきれないとも感じている。最近のエントリでも少しふれたが、「生成と消滅」という闘病ユニバースの特殊性を徹底的に考え抜くことが必要だと、最近、痛切に感じている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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