消費者ニーズと医療のマッチングサービス:HealthShoppr.com

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患者・消費者の医療ニーズを考えてみると、それらは決して一様ではなく、一人ひとり個別で、しかも特殊なニーズであるはずだ。患者の性・年齢などデモグラフィック属性のみならず、患者のライフスタイルや健康意識などによっても、求められる医療は千差万別であるからだ。ところが医療提供側は、そのような多様な消費者側のニーズを無視してしまいがちである。つまり、建前として「患者の選択」を重視するようになってきたとはいえ、現実には消費者が求める医療と、医療界が提供する医療との間にはギャップが存在し、ミスマッチが起こっている。

別の言い方をすれば、消費者の医療ニーズはもともとロングテール状に存在するにもかかわらず、医療機関側はヘッド部分にのみ対応しようとしている。だが、もしも一人ひとりの医療者を可視化できるとすれば、医療提供側にもロングテールが形成されることになり、両者のテール部分をマッチングさせるサービスが登場する余地が出てくる。それはある特殊な消費者の医療ニーズに対し、それを充たす特別な技能や経歴を有する医師を紹介するようなサービスである。

そのようなコンセプトに基づいて、昨年末にローンチされたのがHealthShoppr.comである。医療における需要と供給の質的ギャップを埋めようという、きわめてシンプルながら説得力のある発想だ。またこのHealthShoppr.comは、米国では「Expedia(ホテル予約サービス)の医療版」と紹介されることが多いようだが、多様な旅行者の個別ニーズに最適なホテルを紹介し、即座にオンライン・ブッキングできる点など、Expediaが提供する利便性を医療に応用しようとしていることは間違いない。

では、このHealthShoppr.comが成立するための基本与件は何だろう。まずそれは、医師一人ひとりをどこまで可視化できるかにかかっているのではないだろうか。つまり、医療提供側が徹底的に透明化され、医師一人ひとりの顔が見えるまで個人データが公開されていなければならない。すでに医師の個人情報が開示され、レーティングデータまで公開されている米国ならこれは問題ないだろう。そして同時に、医療提供側がそのサービスや価格において多様でなければならない。そう考えてくると、日本でこのようなサービスを立ち上げるのは難しいかもしれない。

だが、HealthShoppr.comは、マッサージなど周辺医療からサービス提供していくようだ。つまり特定分野に特化したところからスタートするわけである。日本で同様のサービスを考える場合も、特化型サービスなら実現性もあるのではないか。たとえば不妊治療分野など、可能性はあるかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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