オープンソース方式で医学調査研究:CureTogether

CureTogether

新しい患者SNSとして登場したCureTogether。一見してPatientsLikeMeと似ているのだが、「open source health researchのプラットフォーム」であることを強調しているところが非常におもしろい。新薬開発、新治療法開発にともなう調査研究を、Linux開発などと同じように、オープンソース方式でやってみようというのである。

HIV/AIDSや癌をはじめ、新薬や新たな治療法の開発が急がれている疾患は多いが、これまでは個別製薬メーカーが、調査研究に莫大な開発費用と時間を投資して開発を進めていたわけである。製薬メーカーにとって開発リスクは大きいものの、いったん開発が成功すれば、特許によって独占的に巨大な利益を上げることが可能であった。だが、これら新薬開発など医学的成果は個別企業が独占するものではなく、広く人類の公共財としてパブリックに共有すべきものだとの批判も一方には存在したのである。知識情報をはじめ医学的成果は、もともとパブリックな性格を有しているはずだからだ。ではIT分野のように、新薬や新治療方法をオープンソース方式で開発してはどうだろう。そんなアイデアを実行に移そうという、まさに画期的なプロジェクトがこのCureTogetherである。また、「クラウドソーシング・ブック」と名付けられ、疾患ごとに患者体験を集約した本も刊行されるようだ。

Health2.0とは結局、このような方向で新たに医療をとらえ返すことだと、改めて認識させられた。まだ細部が詰められていない点もあるようだが、わくわくさせられるプロジェクトだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


オープンソース方式で医学調査研究:CureTogether” への2件のコメント

  1. いつも楽しみに拝見しています。1周年おめでとうございます。
    三宅さんの記事には、いろいろなインスピレーションをいただいております。
    今回も、興味深い記事をありがとうございました。
    いままででしたら同じ場所にいる、あるいは同じ組織に所属することによってしか技術や知識の集約性が発揮できなかった。程度の差こそあれ、何かしらの共同体への所属、組織への忠誠が技術の集約、知識の集約のためには必須だったのが、確実に変わってきている、と考えてよろしいのでしょうか。

  2. masa-o さん。
    そうですね。たとえば「ウィキノミクス」(マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ:ドン・タプスコット-アンソニー・D・ウィリアムズ)で指摘されていたようなことが、医療分野でも起きるようなイメージではないでしょうか。ご指摘のとおり、「組織の壁」はどんどん低くなるでしょうし、組織への忠誠心も知識集約の必要条件ではなくなるかもしれませんね。

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