医療とITの不思議な関係

オバマ大統領の医療政策が、次第に明らかになってきている。いささか乱暴に要約してしまうと、医療保険加入者の拡大とHIT(医療情報技術)導入推進による医療コストダウンということになるだろうか。後者だが、「5年以内にすべての医療情報を電子化する」とのオバマ大統領発言を聞いて、「あれ?、じゃNHINはどうなるんだ?」と素朴な疑問が湧くのである。

NHIN(National Healthcare Information Network)構想は、ブッシュ政権の医療政策の目玉として華々しくブチ上げられた。たしか当初計画では「2012年までにすべての医療情報を電子化し、全米医療ネットワークを構築する」との目標が掲げられていたはずだ。だが一昨年あたりからこの計画に対し、あちこちで疑念が囁かれるようになった。HHSのレビット長官の孤軍奮闘もむなしく、現に計画進捗状況は大幅な遅れを見せていたからだ。様々な遅滞要因の中で、特に医療機関側がEHRなどの導入に消極的であり、インセンティブまで用意しても遅々として進まなかったことが大きいと言われる。だが、いずれにせよオバマ政権の「5年以内」とのアナウンスにより、実質的にNHINの目標は先送りされたことになる。また、オバマ政権がNHINを引き継ぐのかどうかも不明だ。RHIOの破綻などの現状を考えると、この際、いっそ一から計画を立案しなおすべきかも知れない。

だが、先日の日本の医師グループによる「レセプトオンライン化反対訴訟」や、米国医療機関の以上のような医療情報電子化への消極的態度などを見ていると、「医療とITというのは親和性が低いのか?」などと考え込んでしまうのだ。いやちがう、正確を期すとすれば「医療とIT」ではなく「医療者とIT」と言うべきかも。当方などアウトサイダーの目から見ると、このあたりが摩訶不思議なのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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