知識情報の構造化

昨日のエントリでは「ここまで来ると、更にもっと可視化を進め闘病ネットワーク圏の全体像をとらえることができればと思う」と書いた。これは現時点での正直な感想である。だが、これとはいささか矛盾するかもしれないが、情報の単なる量的拡大だけで胸を張って「良いサービス」と言えるかと考えると、必ずしもそうではないだろう。

年初から、TOBYOトップページに「患者の叡智(Wisdom of Patients)」というスローガンを掲げている。これは、闘病ネットワーク圏に蓄積され共有された大量の知識と体験のことを指している。もちろんまず、この膨大な「知識と体験」をすべて可視化し利用可能とすることを、私たちは目指している。だがその次に、膨大な知識情報を利用しやすい形に構造化しなければならないだろう。TOBYOには、たとえば「乳がん」や「うつ病」のように800を超える闘病サイトを擁する疾患もある。これらを単純にリスト提示しただけでは、かえって利用しずらくなることもあり得るだろう。大量の知識情報に何らかの秩序を与え、ユーザーの利用目的に最適化されるような構造化が、いずれどうしても必要になるのだ。そのための最初の具体プランもすでに検討済みで、検索エンジンのパワーアップが終わり次第早く着手したい。
たとえば米国の医療情報検索サービス「OrganizedWisdom」だが、彼らは紆余曲折を経て、単に検索結果を大量提示するよりも、むしろ少数の情報に絞り込んで提示する方向を模索している。そのためにヒューマンパワーを活用し、一種の「人力検索」のようなプロセスを導入し、知識情報の構造化をめざしているのが注目される。まさにサイト名「OrganizedWisdom」を地でいくような「知識の組織化(構造化)」を志向しているのである。

だが、「知識情報の構造化」は「知識情報の量的確保」を前提としている。構造化するためにも、ある一定以上の情報量が事前に確保されていなければ手の打ちようもないからだ。そして、知識情報の構造化の担い手は、今のところ機械ではなく、人間であることも間違いないだろう。

自然発生的に作られた闘病ネットワーク圏自身が、いずれ自らの知識情報を構造化していく。

当方は勝手にこんなビジョンを描いている。その時に、TOBYOをはじめ他の様々なツールが、ユーザーの構造化行動に役立つように準備されていなければならない。いずれ、TOBYOは他のHealth2.0ツールとコラボレーションし、闘病ネットワーク圏を開発していくことになるだろう。そんなことを夢想している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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