Medicine2.0

Medicine2.0Health2.0の春季コンファレンスが終わったと思ったら、今度はトロントで9月、「Medicine2.0」コンファレンス開催が発表された。コンファレンスの公式サイトもローンチされた。しかし、Medicine2.0って、Health2.0とどう違うのか?。紛らわしいではないかと、誰もが思うはずだ。せっかくムーブメントとして盛り上がり始めたHealth2.0に、水を差すようなまねはやめてもらいたいとも思う。それに「Medicine2.0」と言えば、ハンガリーの医学生Bertalan Mesko’氏がブログ「ScienceRoll」で、昨年あたりから言い始めたのではなかったか?。

いろいろな疑問がムクムクと湧き起こってくるのだが、このMedicine2.0コンファレンスのグループの方は、インターネット黎明期の「eヘルス」時代から調査研究実績のあるオンライン出版社として知られるカナダのJMIR(Journal of Medical Internet Research)などが中心となっているようだ。つまりどちらかと言えば、かなりアカデミックなグループと言える。

中心人物でトロント大学のギュンター・アイゼンバック準教授は、次のように述べている。

「なぜコンファレンスをHealth2.0ではなく、Medicine2.0と呼ぶことに決めたのか。この頻繁に聞かれる質問に、手短に答えておこう。その答えは単純だ。純粋に実践的な理由にすぎない。まず第一に、Health2.0という言葉は、マシュー・ホルトが彼の一連のコンファレンス・シリーズに付した商標になっている。そこでわれわれは、よりアカデミックでインターナショナル志向のわれわれのコンファレンスを、マシュー・ホルトの成功と混同されるリスクを回避するために、自分たち自身のブランドを望んだのだ。また明らかにオーバーラップするところもあり、われわれはHealth2.0の出席者たちにもわれわれのコンファレンスに参加してもらいたいのだが、われわれは、われわれのコンファレンスがHealth2.0のコンペティターというよりも、むしろそれを補完するものだと考えている。なぜならHealth2.0は主にビジネス関係者を魅了したが、Medicine2.0は学術関係者を魅了するものになるからだ。それ以上に、Health2.0の定義は、あまりにもアメリカ合衆国にフォーカスしすぎであるが、Medicine2.0はよりインターナショナルな方向性を目指す。」”Medicine 2.0 Congress Website launched (and: Definition of Medicine 2.0 / Health 2.0)”

ということで、どうやらMedicine2.0はギュンター・アイゼンバック準教授らによって商標設定されたようだ。これではBertalan Mesko’氏などがかわいそうだ。だが、確かにHealth2.0ムーブメントにおいては、米国医療改革という焦点がかなり強調されていることは間違いなく、国際性と普遍性という面での脆弱性はぬぐえなかった。その意味で、アカデミックな普遍性の観点から、「Web2.0+医療」という医療情報革命を取り上げることの意義はあるだろう。

またアイゼンバック準教授によると、Medicine2.0の主要テーマは次の五点であるそうだ。

1) Social Networking
2) Participation
3) Apomediation
4) Collaboration
5) Openness

あまり見慣れない言葉として3が注目される。この「Apomediation」というのは新しい社会技術論の用語で、disintermediation(中間項排除)の過程であるとされる。アイゼンバック準教授によれば、医療はこれまでの仲介人(医師)をバイパスする方向へ向けて進化するとされる。伝統的な医療者は、なんと今後、「ネットワーク/グループ/協調フィルタリング」というものに置き換えられていくというのである。これらを聞くと、かなりラジカルな医療情報理論に基づく医療改革論が展開されていることがわかる。また「PHR2.0」という新しいPHRフレームまで提起されており、これらもまた興味津津である。

Medicine2.0とは、まことに紛らわしいものが出てきたものだが、その中身はかなり強烈に次世代医療を透視するチャレンジであるようだ。その意味で、今後、このグループの論文なども研究していきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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