YouTubeの医療映像コンテンツ


昨日のエントリで、「DIPEx JAPANの活動しかり、今年は患者からの発信に注目が集まりそうです。」と「楽患日記」から引用しておいたが、たまたま昨夜のNHKニュースでこの「DIPEx JAPAN」を取り上げていた。当方、この団体の活動についてはほとんど知識がないので、なんとも論評しかねるが、ニュースを見る限り大変な労力をかけて闘病体験を映像収録しておられるようで、その熱意には感心した。当面、100篇の闘病映像記録を収集し、来年からウェブで公開するということだ。

ところで、昨日の当方エントリ・タイトルは「日本のPGC(患者生成コンテンツ)」としたのだが、ではこの「DIPEx JAPAN」はPGCかと言えば、そうではないだろう。PGCとは、患者の自発的な制作活動によって、患者自身の自己表現の一環として作られ、公開されたコンテンツである。そして現在、これらのコンテンツがアップされるいちばんメジャーなソーシャルメディアがTouTubeであることは、今さら言うまでもない。 では、YouTubeにおける医療関係コンテンツの実態はどうなっているのか。

たとえば、YouTubeにアップされた「Cancer」(がん)関係の英語コンテンツを検索してみると、およそ800本近くのコンテンツがあることがわかった。しかし、その中には闘病体験や医療関連ではないコンテンツも混じっている。これらのコンテンツは、大きく闘病体験ビデオと医学情報ビデオとに分けられ、さらに個人制作による文字通りのPGCと、医療機関や医療専門映像プロダクション制作によるものとに分かれる。ちなみに日本語コンテンツのうち「乳がん」でヒットした件数は31件あった。

実は当ブログで、昨年11月に「増える医療ビデオ」というエントリをポストしてあるが、その時、ウェブ上の医療ビデオのトレンドを次の四点に整理しておいた。

  1. 一般的な医療サイト:WebMDからMayoClinicに至る一般的医療サイトにおけるビデオライブラリーの拡大
  2. 特化型医療サイト:アメリカがん協会サイトや自閉症の「Autism Speaks」のような特化型医療サイトにおけるビデオコンテンツの増加
  3. 医療ビデオ専門サイトの増加:ICYouHealthTheaterTVeMedTVなどのローンチ。
  4. 医療ビデオブログ:個人医療体験のビデオによる共有

これらのトレンドを現時点で見直してみると、上記3と4のうち、かなりのコンテンツがYouTubeへアップされ始めていると思われる。3の医療ビデオ専門サイトの中では、たとえば「DramaticHealth」のようにヴァイラル・マーケティングを狙い、YouTube内にかなり充実した独自チャンネルを構えている例も見られる。そして4のような文字通りのPGCだが、これもソーシャルメディアへアップしておく方がアテンションを集めやすいので、今後、個人の闘病体験ビデオがYouTubeなどへ集まる可能性は大きい。

ただYouTubeなどにアップされる医療関連コンテンツも、やはり玉石混淆状態である。 ここから有用なコンテンツを選び分ける必要はあるだろう。そうすると、TOBYOのようなアグリゲーション・ツールが活きる余地が出てくる。YouTubeなど映像系のソーシャルメディア、そして個人闘病サイトなどにアップされている闘病映像情報を、ユーザーみんなで探し出し集めていくような、そんな情報利用シーンが想定される。その時、TOBYOツールバーで即座にエンベッド・コードなどを取得し、映像情報を登録できれば便利ではないだろうか。

また、TOBYOアルファ版をご覧いただいても分かるように、TOBYOは闘病体験情報だけでなく、ウェブ上の有用な 医療情報の収集ツールという性格も強まってきている。闘病映像情報のみならず、医療機関、製薬メーカー、研究機関などが公開している医学映像情報も、収集対象に加えていくことは自然な流れだと思う。

ちなみに、YouTubeにアップされた医師CGCとして話題になっているのが上記のアニメである。 「医療崩壊」というテーマを分かりやすく、哀調をこめて、「初音ミク」に歌い上げさせている。ヒステリックに「医療崩壊」を絶叫するよりは、よっぽど共感を得られやすいかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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