ネットリテラシーとネット医療情報

NetLiteracy

先週のTecCrunchで「検索結果を信用していない人が増加中」というエントリーがポストされた。南カリフォルニア大学のデジタル未来センターの調査レポートが元ネタなのだが、Googleなど検索エンジンの検索結果に対する信頼度が低下しているというのだ。

この調査から、検索エンジンの情報を信用している人がわずか51%しかいないことがわかった。これは2006年の62%から減少している。Googleは米国で最も利用されている検索エンジンだが、半数近く(49%)の利用者はGoogleを信頼していない。この結果は興味深い。(TecCrunch Japan, 2008年1月18日)

たしかに汎用検索エンジンが提示する検索結果はゴミ情報が多く、膨大な「情報の海」から求める情報を選択吟味するのは容易ではない。だから、一般的にすべての検索結果を信頼できるわけがないし、むしろ個々の情報に対し猜疑心をもって臨むのは当然である。となると、検索結果に対する信頼度低下を一概にネット全体への不信感の増大と見ることはできず、逆に健全なネットリテラシーが定着してきている証左として見るべきだと思える。

だが、昨日のエントリーで「SNS利用の情報検索」という動向を取り上げたが、ネットリテラシーの成熟をもってしても、Googleのような機械検索の限界はいかんともしがたく、ますます「欲しい情報へ効率的に到達する」ニーズと現状とのギャップは拡大している。MahaloやWikiaのようなソーシャルサーチ・サービスの登場は、このような状況を解決する試みとして評価できると思う。

医療情報については、従来からその信頼性や品質が問題となってきた。Googleのような汎用検索エンジンでは情報の信頼性や品質まで判別できず、単にアクセスデータから順位づけられると推測される検索結果リストを大量に提示するのみである。これに対し医療バーティカル検索エンジンが様々に提供されてきたが、HealthlineやHealiaなど従来型バーティカル検索エンジンとは一線を画し、次世代サービスとして医療ソーシャルサーチが徐々に登場しつつある。多少のブレはあるが、昨日取り上げたiMedixや昨夏大胆に方向転換したOrganizedWisdomなどを、この新しい潮流と見なしてよいと思う。

さてネット上の医療情報はまさに玉石混淆状態だが、従来からこれに対する二つの態度が存在してきた。

  • ネット情報ソースに規制をかける:「サイト認証」など各種レギュレーション
  • ネット情報の受け手のリテラシーを向上させる

上記の二つの態度のうち、医療分野でネット初期段階から特に主張されてきたのは前者である。後者は皆無ではなかったが、言及される機会は圧倒的に少なかったのである。たしかに黎明期ネットにおいては、後者の成熟を待つよりも、とりあえず前者を実践課題とする必要があったのかもしれない。だがインターネットは既に普及段階を終え、ユーザー側のネット接触経験が蓄積されればされるほどネットリテラシーも向上してきているのである。つまり上記「規制」論は、ネットが初期段階においては有効であったかもしれないが、すでに歴史的役割は終えているということだ。また「サイト認証」という発想も、もはや古い。現在のインターネットの情報単位は、「サイト」から「ページ」へと移行してしまっているから、サイトのトップページに「認証マーク」を貼るというような発想自体が、今日のネットを理解できていないことを告白するようなものだ。

今後、ネット上の医療情報利用をめぐる論議は、上記後者の「リテラシー向上」を中心的な課題とすべきだろう。そして、ユーザーの情報選択能力を強化する方向で、ウェブ医療情報に関する様々なサービスが開発されるべきだと考える。その際、医療ソーシャルサーチのような情報への新しい経路が重要になると思われる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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