医療分野で伸びる、生活者のソーシャルメディア利用

icrossing

インターネットで医療情報を調べたりアクセスしたりしている人のうち、34%がソーシャルメディア(Wiki、ブログ、SNS、動画共有等)を利用していることが、今月、インターネット・マーケティング会社であるiCrossing社から発表された調査結果でわかった。iCrossing社ではここ二年ばかり、金融、旅行、ショッピングなど、生活者のネット検索行動を調査してきたが、今回は医療情報に関する検索行動が調査テーマになった。

調査結果によれば、ソーシャルメディアを利用する際、生活者は「意志決定モード」の状態にあるとのことである。これは生活者が医師、医療機関、治療方法など医療を選択する時に、それぞれのコストや評判に関する情報を求めてソーシャルサイトを訪れることを示している。これらのニーズに対応するソーシャルサイトとしては、まずユーザーが医師や医療機関を格付けするようなレーティングサイトが想起される。

さらに医療プロフェッショナル(医師、看護師、薬剤師等)の次に、「同じ病気に罹っている他の誰か」が、特定の医療についての助言を求める生活者にとって決定的に重要視されていることがわかった。特に重篤な慢性疾患の患者の場合、薬剤や治療プロセスについて「消費者エキスパート」に賢明な助言を得ようとしている。

この際の生活者サイドのロジックはこうだ。「果たして、薬の副作用やクォリティ・オブ・ライフの問題に耐えて、確かな経験に基づく情報を持った患者より以上に、より良くアドバイスできる者は存在するのか?。存在しない」。また、調査によれば、ウェブで医療情報を利用する人の三分の二近くが、近頃次第に浮上してきた「コンシューマー・オピニオン・リーダー」を「極めて重要だ」もしくは「大変重要だ」と報告している。

そして、何らかの形で医療に関してソーシャルメディアを利用する際、その最も切実な利用理由は、「情報交換や支援を得るために他の生活者とつながりたいから」ということであり、ネット医療情報検索者の75%が同意している。また、他のタイプのサイトよりもソーシャルメディアの方を利用する次なる重要な理由としては、「処置や医療機器のコストをもっとよく知りたい」(55%)、「特別な治療をしてくれる医師を探している」(52%)となっている。

今回のiCrossingの調査結果を見て、まず注目されるのは、意外に早く、Health2.0の中核を成すソーシャルメディア成長を裏付けるデータが上がってきたことである。このことを踏まえると、現状の米国生活者のウェブ医療情報検索行動は、「汎用検索エンジン、医療ポータル、ソーシャルメディア」を「三大起点」とした動線上に展開されていると見て間違いないだろう。

この中で「汎用検索エンジン」は徐々に「特化型検索エンジン(バーティカル検索エンジン)」に置き換えられていくだろう。さらに「医療ポータル」だが、これは「ヘルスケア対シックケア」軸の両端へと分化していくのではないだろうか。「全方位型」というビジネスモデルが、結局、どのユーザー層のどのニーズも十分には満足させられなくなる、という事態はあらゆる市場で目撃されてきたことだ。そしてソーシャルメディアだが、これもまだ初期採用期のアーリーアダプターを獲得する段階であると考えた方がよいと思う。

「医療における消費者生成コンテンツは、初期採用段階の敏感なオーディエンスを探している。特定の疾患領域における『患者オピニオンリーダー』であるブロガーやソーシャルメディア通をコアとする情報構造は、もうすでにできあがっているのだ。がんであれ、糖尿病、MS、メンタルヘルスやHIVであれ、そして他の慢性疾患の長大なリストにある病気群であれ。

製薬会社は、患者や処方薬の知識を持っている『キイ・オピニオン・リーダーズ』(KOL)の存在の重要性を理解し、時には報酬を与えている。それと同様に、「消費者オピニオン・リーダー」(COL)もまた他の消費者やステークホルダーの両方に対して、巨大な影響勢力になるだろう。」(“People who need people use social media” by Jane Sarasohn Kahn)

今回調査結果から、大きなトレンドはつかまえることができたと思う。あとは具体アイデアと個別アクションだ。そしてミッションは、日本の閉塞状況を打破すること。

<調査概要>

  • プロジェクト名:”How Americans Search. -Health and Wellness”
  • 調査実施機関: iCrossing, Opinion Research Corporation
  • 調査実施期間:2007年12月3日-4日
  • 調査対象者:18歳以上のインターネット医療情報検索経験者
  • 対象サンプル数: 1084
  • 調査方法:直接面接法

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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