競争激化する米国医療ポータル市場

EverydayHealth

10月3日付けNewYorkTimes で、スティーブ・ケース率いるRevolutionHealthが同じ医療ポータルサイトのEverydayHealthに吸収合併されたことが報じられた。夏以来、身売り話があちこちで囁かれていたRevolutionHealthだが、結局、医療ポータル分野における「二位、三位連合の誕生」という形に決着した。

吸収合併ということで、EverydayHealthを運営するWaterfront Media社がRevolutionHealth側のウェブサイトをはじめすべての資産を引受け、経営のリーダシップを握ることになる。合併にともなうRevolutionHealthの評価額はおよそ1億ドル。ちなみにサイト開発時の投資総額はおよそ5億ドルであった。

昨春、はなばなしくデビューしたRevolutionHealthだが、結局200人もの社員を抱え、人件費が収益を圧迫し、売上はそこそこ上げながらも利益の出ない状態に陥っていたようだ。その後リストラに着手したが、あの重装備で全方位型のサイト構造では実効的なコストダウンが難しかったのだろう。このあたりの問題は以前のエントリでも指摘してある。

さて、今回の「二位、三位連合」の成立によって、米国の医療ポータル市場の勢力分野は大きく変わる可能性がある。過去およそ10年間にわたるWebMDの独走状態が、今回の「連合」成立によって終わるかもしれないからだ。今年7月の各サイトの実績(ユニーク・ユーザー数、comScore調べ)を見ると次のようになる。

  1. WebMD         1720万
  2. Everyday Health    1470万
  3. Revolution Health    1130万

単純に二位三位連合の数字を足し上げると、WebMDをはるかに上回ることになる。これに危機感を持ったWebMDは、先月QualityHealth.comを買収したが、これではまだ二位三位連合にとどかない。現状では二位三位連合を上回る妙案はなく、WebMDの二位転落はほぼ確実視されている。こうなってみると、スティーブ・ケース氏は自力でRevolutionHealthをナンバーワンにすることには失敗したが、結局、従来の医療ポータル市場に変化の風を起こすことには成功したと言えるかも知れない。

米国のウェブ医療情報サービス市場は、サイト利用人口で前年比21%(2007年)成長しており、これは全ウェブ平均を大幅に上回っている。つまりウェブ市場で最も成長している分野の一つなのである。当面、この成長の風を自社の飛躍に活かせられるかどうかが、各プレイヤーの経営課題となるだろう。

ところで以上は米国のはなしである。日本のウェブ医療情報サービス市場のほうだが、こっちはまだまだ、残念ながら「市場成長」などを語る段階ではない。市場があるのかないのかも判然としないような、そんな状況である。だが、とにかく具体的なアクションを起こしてみるしかない。消費者の医療ニーズは必ず存在するのだから、それをウェブでどのように顕在化させるかである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>