Health2.0企業の基本条件: 啓蒙から参加へ

米国のHealth2.0論争はまだ続いているが、では結局のところ、Health2.0企業が成功する条件とは何なのだろうか。改めてこんな風に問題を立ててみると、今やその結論はきわめてシンプルな形で提示できるような気がする。このブログも、この問いに答えを見つけるために延々と書いてきたわけだが、ああだこうだと書き散らかしているうちに、いつの間にか問題は収斂してきている。

Health2.0の定義については、これまでスコット・シュリーブ氏の定義をはじめとして、多数紹介してきたのでここでは繰り返さない。これらの定義を手がかりに次のような基本前提が指摘できるはずだ。

  1. 次世代医療において、ますます消費者は医療に参加し中心的役割を果たしていく
  2. 消費者が望む時と場所で、消費者が望むような仕方で、医療供給がもとめられ、従来の医療サービス流通形態は多様化する
  3. 消費者ニーズの充足をめぐる医療機関競争が、医療の効率化と質的高度化を促進する
  4. インターネットをはじめとする情報環境は以上のトレンドを加速し強化する

このような前提のもとにHealth2.0企業が成功するための基本条件とは

・医療における消費者へのパワーシフトをエンパワーする方向性を持っているかどうか

この一点にかかっていると思われる。つまり、従来のように医療界から専門知識を一方通行で単にフローさせるような医療情報サービスではなく、消費者の情報活動、学習活動、選択活動に必要なパワーを強化する方向性を備えているかどうかである。従来の日本の医療情報サービスは、専門家の知識を一方的に消費者大衆に流して切り売りするという、つまり「啓蒙」という発想を根底に持っていた。だが、時代は「啓蒙」ではなく「参加」をもとめている。特定専門家やその予備軍だけが、稀少メディアで特権的に発言し啓蒙する時代はすでに終わっているのである。同様に次世代医療においても、医療者や研究者による「啓蒙」ではなく、消費者の「参加」のほうが決定的に重要になる。

古い医療ビジネスは、専門家や評論家を動員し、今後も相変わらず「啓蒙」を追い求めるだろう。だが、次世代医療の焦点はそこにはない。消費者が医療に参加することを支援する機能とサービス。これを提供するのがHealth2.0企業である。「その機能は、そのサービスは、消費者の医療参加を促進する方向性を持っているか。パワーシフトを強化する方向性を持っているか」。このようなシンプルな問いかけに、それぞれの事業は答えることが求められる。

われわれは今、啓蒙型医療から参加型医療への移行過程のとば口に立っている。この移行エネルギー自体を自らの力源に利用できるかどうか。おそらくこのこともHealth2.0企業のメルクマールになるだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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