家系図から家族の健康リスクを知る新サービス「MyFamilyHealth」

MyFamilyHealth

昨年あたりから、海外では個人の遺伝子解析サービスが、Googleの資本参加で注目される「23andMe」社をはじめ一斉に立ち上がった。遺伝子データを使って将来の個人別疾患リスクを予測しようというものだが、料金も各社1000ドル程度にまで下げてきており、今後の有望医療市場と目されている。ところで同じく遺伝子に着目しながらも、「家系による遺伝」という点にフォーカスした新しいサービスがイギリスから登場した。

MyFamilyHealth はオンライン家系図サービスとSNSを合体させ、これまでにない個人医療情報サービスを立ち上げた。「家系図は最も重要な遺伝子診断になった。すべての家族は何らかの疾患を持っている。そのことをより良く知るためには、より多くのツールを使って予防医学を実践しなければならない。あなた自身とあなたの子供たちのために。」とトップページには掲出されているが、このサービスはまず家系図を作成し医学的な情報を加えて提出すると、その「医療家系図」を元に、ユーザーとその家族に存在する遺伝的リスクを分析評価してくれるのである。

この「医療家系図」と分析結果は、SNSを使って家族全員に共有される。また遠い親戚や友人、そしてかかりつけ医ともこれらの情報を共有することができる。特に医師と情報を共有すれば、あらかじめ医師がその家族の遺伝的リスクを知ることになるので、より的確な診療が可能となる。また、単に医療家系図を作るだけでなく、ユーザーが望めばオプションの遺伝子解析テストや特別の検査を受けることにより、一層緻密なリスク予測が提供される。

また保険機構、生保、医療機関、検査ラボなど各種団体と、ウィジェットを仲立ちとするコラボレーション構想があるようで、なかなかしたたかなビジネススキームが準備されているように見受けられる。では、先行する23andMeなどの遺伝子解析サービスとの差異は何かと言えば、遺伝子データの「ストック系サービス」と「フロー系サービス」の差異であると言えるのではないか。23andMeなどがユーザーとの1対1的関係で遺伝子情報をストックして利用提供するのに対し、MyFamilyHealthはユーザーを中心として、もちろんユーザーのパーミションに基づいてだが、医師をはじめその他各種団体へ遺伝子情報がフローする回路を作り上げようとしている。そして、もちろんこのフロー過程でマネタイズが起こることを望んでいるはずだ。

だが、個人の遺伝子情報の扱い方のルールの問題がある。これらはまだ不透明な部分が多い。とはいえ今後の新しい医療情報サービスが、遺伝子情報の活用を軸に開発されることはまちがいない。このMyFamilyHealthを見ていると、「遺伝子情報+インターネット」が次の医療市場フロンティアであるような、そんな予感がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>