医療IT化は民間主導で

昨日のエントリでリテールクリニックと遠隔医療を取り上げたが、今日の日経朝刊に「遠隔医療 対象を拡大」との記事が一面に掲載されている。これは、総務省と厚労省が共同開催している「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」の中間報告に基づく記事であるようだ。ざっと目を通したが、さしたる目新しい情報も見いだせなかった。ついでに総務省のサイトを見たが、この「懇談会」のメンバーを見ると、そこにかの悪名高き「住基ネット」の仕掛け人とされ、またこのような官庁主催「検討会」の「常連」である某教授の名前を見て、「やはり」と苦笑させられた。

「医療のIT化」というと、これまで官庁が医療者、学者、ITゼネコンなどを集め、検討会や懇談会で政策指針のたたきを作って来たのであるが、そろそろこのようなやりかたをやめるべき時期に来ているのではないか。最近、米国の状況を見ていると、「医療IT化は政府主導ではなく、民間主導で行くべきだ」との主張が徐々に増えてきている。ブッシュ政権のNHIN構想が目標年次を達成できないのは、すでに周知化しつつあるが、これも政府機関の非効率で実行遅延型の実施体制が問題視されつつある。

日本でも、たとえば「レセプト電算化」など、いったいいつになったら実現されるのか?。もとより「検討会」や「懇談会」などは、単なる「国民的コンセンサス形成」を偽装するための形式的儀式に過ぎず、新規性のあるエッジの立った技術やビジョンが議論されることも提起されることもない。これは今回の「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」の資料を見ればわかる。こんな「儀式」をのんびりやっているうちに、技術進化はどんどん進み、時代に取り残され、誰も読まない大層な「報告書」だけが最後に残るという事態になる。

「医療のIT化」をめぐる官庁主体の様々な「国家プロジェクト」によって、ここ10年ほどでいったい何がもたらされたかと言えば、「レセプト電算化」さえ達成できないという体たらくぶりでしかない。われわれはこれらのことをしっかりと目に焼きつけ、決して忘却してはならないだろう。また、開発コスト391億円、年間運用コスト140-180億円とされるあの「住基ネット」のコストマインド皆無の愚行を、医療分野で繰り返してはならないのである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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