闘病者2.0

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昨年来、Health2.0について様々にその定義や注目すべき事例が語られてきたが、よく考えてみると、それらはややもすると「サービスの作り手、送り手」など供給側の視点に立つものが多かったのではないだろうか。そう考えると、たしかに医療消費者や闘病者側の新たな動きというものが、あまり紹介されてこなかったことに気がつく。これを端的に表現すれば、「Health2.0サービスやDoctor2.0は登場したが、Patient2.0は登場していない」とでもなるだろうか。
このあたりに対する反省もあってか、先週の海外Health2.0ブロゴスフィアでは、「e-Patient登場!」など、新しい医療消費者像を論じるエントリが多かった。それらの多くはオランダの肺がん患者であるMaarten Lens-Fitzgerald氏の事例(上写真はFitzgerald氏のブログサイト)を紹介し、積極的に闘病情報を発信する新しい患者像を論じるものである。そして、中でも特に取り上げられたのはFitzgerald氏の次のような行動である。

  • 彼はレントゲン写真をオンラインで公開している
  • 彼は自身の「肺がんの旅」をブログで公開している
  • 彼は病院の内外の体験をtwitterで配信している
  • 彼は携帯で写真を撮りそれらを写真共有サービスで公開している
  • 彼は病院内の体験ビデオを制作し、来訪者のインタビューに答えている
  • 誰でもGoogleドキュメントを介して、彼とアポイントメントをとることができる

なるほど、Web2.0ツールを最大限利用してFitzgerald氏は従来の患者像の枠を破り、病院内で治療しながら世界とコミュニケーションするようなまったく新しい患者像を提起している。まさに「Patient2.0」と言ってよいだろう。インターネットは「病室やベッド」などの頸木から、患者を解放したのである。

ところでこれらの海外エントリを読みながら当方が思ったのは、「なぁーんだ。日本のほうが進んでいるじゃないか。」というものである。日本ではインターネット黎明期から、患者達が自分たちの闘病生活をネットを使ってオープンに配信し、闘病ネットワーク圏という独自の闘病情報共有圏を作ってきたのである。「闘病情報の公開」という点では欧米よりも先行してきたのである。日本ではすでに10年前に、自分のレントゲン写真や検査データを公開するサイトをはじめ、自分の開腹手術ビデオを公開するサイト、さらに闘病期間中の家計簿を公開するサイトまで存在していたのである。

これらを見ていると、これまで常に持ち出されてきた「プライバシー」などという考え方が、いかに古臭く陳腐なものであるかを実感する。実際、患者側の情報公開と情報共有にかける熱意は、それらのお上品な物言いをまるであざ笑うかのようにラジカルである。そしてこれらネットによって招来された新しい現実をあるがままに感知せずに、いったいどこに「次世代医療」の方向感覚を掴むことができようか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


闘病者2.0” への2件のコメント

  1.  先日、iPhoneを新規契約しました。
     iTunes StoreのiPhone向けアプリケーションの健康&フィットネスというジャンルにMIMという無料のアプリケーションがあります。
     http://www.apple.com/jp/itunes/store/appstore.html
     
     MIMを試してみると、CT、PET、MRI及びSPECT(訳注:single photon emission computed tomography 単一光子放射型コンピューター断層撮影法)の各種画像をiPhone上で閲覧できるのと、これらの画像データをiPhoneからアプリケーション製造元のMIMビスタのMIMワークステーション又はMIMストレージサーバーに送受信する内容でした。

     MIMをインターネットで調べると、米国オハイオ州にあるMIMビスタという会社のiPhone専用MIM総合画像情報システムアプリケーションでした。
     ↓
     http://www.mimvista.com/iphone

     同社サイトのiPhone専用MIM総合画像情報システムの記事を仮訳し、私のブログに掲載しましたので、御高覧下さい。
     ↓
     http://melit.jp/voices/fight/2008/07/iphone_2.html

     なお、翻訳精度については細心の注意を払っておりますが、その情報の正確性、通用性、完全性について、明示的であれ黙示的であれ、いかなる責任を負うものではなく、保証をするものではないことを御了承ください。また、内容に関する正確な情報を得るためには、必ず原文で御確認ください。

     このアプリケーションは、デモンストレーション用のもので、今のところ画像データの送受信サービスの本格的な運用は始まっていないようです。

     画像処理ワークステーションに縛られずに携帯電話でこうしたデータを利用できるというのは、Health2.0ではかなり大切だと思います。
     また、医師のみならず患者も利用できるようになると、患者と医師の情報共有化も進むと思います。

     以上情報提供です。

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