ブログ主導型事業開発

引き続き、TOBYOベータ版について様々な反響を頂戴しているが、Next Doctors’ Diaryから、「Welcome TOBYO !」というエントリをいただいた。

そのエントリには、「検索エンジンで『闘病記』、と検索しても闘病記を横断的に収集し、検索できるようにしているサービスは見かけません。逆にどうして今まで無かったのでしょうか?」とあるが、まさにこのような疑問から、われわれのTOBYOは始まったと言えるだろう。

だが、最初からわれわれの問題意識が明確になっていたわけではなかった。今にして思えば、最初はぼんやりした大雑把な方向性しか手元には用意できていなかったはずだ。それが徐々に形を取り始めていったのは、むしろ米国をはじめとするHealth2.0の動向を研究しながら、このブログを書いて来たのが大きかったと思う。

変な話だが、「ブログ主導型の新規事業開発」というスタイルが、TOBYOの場合当てはまるのかもしれない。もちろん開発企画書もいくつか書いたが、それらは思いっきりシンプルなもので済ませてしまった。むしろ米国から次から次へ起ち上がってくるHealth2.0事例を素材に、あれこれ思考実験しながらブログを書く中で、TOBYOのディテールが少しづつ決まってきたのが実情である。振り返ってみると、ここ一年半ほどで四百数十本のエントリを書いてきたが、それらのエントリの一つ一つに、TOBYOの基礎アイデアや構想スケッチや仮説などが切れ切れに散在しているはずだ。

また、「TOBYOの元になった海外の事例は何か?」ということを人から聞かれることもある。はっきり言って、TOBYOのような医療分野における情報サービスは世界にはまだない。したがってモデルもない。しかし、あるいはHealth2.0の事例すべてがTOBYOの基礎を作っているとも言える。ブログを書きながら、孤立した事例の断片をまだ見ぬ図柄のジグソーパズルへ一つ一つ嵌めていくような、そんな作業を延々とやってきたのかもしれない。

ブログというのは何かの体系を作り上げる行為ではなく、その時々に起ち現れるばらばらの素材に、思考の断片を投げ返すようなものだ。そこでは切断と飛躍はつきものであり、だから自由な発想ができるとも言える。むしろ一点の矛盾もなく、小奇麗に完成されたプランほど退屈なものはない。その意味で振り返ると、このブログを書きながらTOBYOを開発してきたことは、結果として良かったのではないかと考えている。もしも、正規の「事業開発マスタープラン」のようなものが最初にあって、整然と事業開発が進んできたとしたら、途中で飽き飽きして、あまりの退屈さゆえにプロジェクトを放擲してビールでも飲みに行ってしまったきり、帰ってこなかったかも知れない。大いにあり得ることだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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