Google Healthベータ版、ついに一般公開へ

Ghealth昨日19日、Google本社で「Factory Tour of Search」と題した報道関係者向け広報イベントが実施され、席上、マリッサ・メイヤーVPからGoogle Healthベータ版の公開が発表された。この広報イベントの模様は、「TechCrunch」で詳しくレポートされている。先週「Google Healthのビジネスモデルをめぐって」をポストしたが、あのエントリ中に「来る19日(月)にマウンテンビューの本拠Googleplexに幹部召集がかけられ、云々」と「Tom Foremskiブログ」を引用した件は、この「Factory Tour of Search」のことであったのだ。

さて、ようやくその姿を見せたGoogle Health。思えばここまでの道のりは長く、また波乱にとんだものであった。2年前の春に出るといわれながら、結局、出たのはGoogleCo-op。さらにその後、才気煥発アーキテクトであるアダム・ボスワースVP(当時)の指揮によって開発が進められたものの、昨夏のボスワース氏自身の「辞任劇」など、ずいぶんと話題を提供してくれたものである。

昨日のイベントでマリッサ・メイヤーVPは「医療記録は本当は誰のものなのか?。その情報はほかでもない、所有者のユーザーがコントロールすべきものなのだ。」と何度も繰り返し強調したようだが、思えば、かつてこのプリンシプルを開発したのはアダム・ボスワース氏であった。氏が去ったのちも、開発チームにこのプリンシプルが継承されていることはわかったが、ではあの「辞任劇」は何ゆえだったのか?。謎を過去に置き去りにしたまま、とにかくGoogle Healthベータ版は一般公開された。

早速ベータ版を試してみた。まだ日本語版はリリースされていないが、Gメールのアカウントさえあれば利用可能だ。今のところ提供されている主なサービスは、個人の健康プロファイル作成、医療機関からの個人医療情報インポート、医療機関など外部医療サービスとの連携、医師検索、医療情報バーティカル検索などである。昨夏、アダム・ボスワース氏が辞任前に説明したサービスと比べると、ずいぶん変わったような気もする。とくに、外部の医療サービスプロバイダーとの連携が強化されているようだ。とは言え、たとえば病院のEMRやEHRからGoogleHealthへのデータ転送が、自動ではなく手動であるなど、これまでPHRとして必須であると議論されてきたポイントへの対応は、むしろ手薄であるように感じられる。

さっそく、リチャード・マクマナス氏の「Read/Write Web」がこのGoogle Healthベータ版をとりあげ、「Google Health Launches – Cautious, Non-Innovative Entry into Health 2.0」というエントリがポストされたが、かなり辛口の論評となっている。「結局、われわれにとってこのGoogleHealthは、単にみせかけの医療検索/ポータルとしか思えない。」とまでマクマナス氏は酷評しているが、たしかに現状は「ストレージサービスに検索機能が付いた程度」と言われても仕方ない。GoogleがやるPHRにしては、誰もが納得させられるようなイノベーティブなポイントがないのだ。

だが、まだ初期ベータ版が一般公開されたばかりである。今後、改良と機能追加が図られるのは間違いないが、やはり問題はそのビジネスモデルである。昨日のイベントでは、またしてもマリッサ・メイヤー氏は「広告モデル」を否定したようだ。結局、Google側から明確なビジネスモデルの説明は聞かれなかったようだが、今回のベータ版において外部医療プロバイダーとの連携が強化されている点に、どうやらビジネスモデルのヒントがありそうである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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