医療分野における検索エンジン

Powerset

今月11日、次世代検索エンジンとの評判が高い「Powerset」が、一般向けデモバージョンをローンチした。デモバージョンだから、まだ検索対象はWikipediaとFreebaseに限られているようだ。Googleの独走状態が続く検索エンジンではあるが、ではGoogleがベストかと考えると、今のところ他に選択肢がないのでGoogleを使っているのが実状ではないか。

特に医療情報を検索することを考えると、Googleの限界は明らかである。検索結果の表示順が適切でない場合が多く、またスパムサイトなど「ゴミ」も相当混じって表示されるので、検索結果から自分が必要としている医療情報を選び出すのに相当の労力を要する。これは、Googleがウェブページ上の情報を「文字列」としてのみ機械的に扱い、その情報の意味を解釈できないからである。これに対し、次世代検索エンジンを標榜するPowersetやhakiaは、情報の意味を解釈することを目指しているから、医療情報検索との親和性は高いと言えるだろう。前のエントリで紹介したように、hakiaなどは医療情報のバーティカル検索にも対応したので、こと医療情報検索に限っては、すでにGoogleを上回る能力を持っているのかもしれない。

ところで検索エンジンで闘病記を探すことを考えると、「偽装闘病サイト」や怪しげな健康食品、サプリメント、オカルト商品などのノイズから、目指す闘病サイトを探し出すのに、実はかなり骨が折れる。「偽装闘病」サイトというのは、検索エンジンに対してはあたかも闘病記サイトであるかのように見せかけながら、肝心の闘病体験情報は収載されておらず、実体は特定の健康食品や治療方法などを訴求するためのサイトのことである。これらは、Googleの検索結果を見ただけでは区別がつかないのでやっかいだ。

また、最近ではさらに巧妙な偽装サイトも出現している。これは、一応もっともらしい闘病サイトの体裁を整えているのだが、注意して見ると具体性を欠いた闘病情報であったり、矛盾する闘病ストーリーであったりする。そして、読み進んでいくとなぜか特定のサプリメント情報が、さも科学的根拠に基づいているような形で提示され、最後にその商品の販売サイトリンクが控え目に記載されていたりする。このようなタイプの偽装サイトを見抜くことは、普通のユーザーにとってかなり難しい。さらにまた、普通のユーザーが制作したサイトにしては妙にデザインやレイアウトの完成度が高く、おまけに、かなり詳細を極める医療情報を満載しているような「闘病サイト」も要注意である。

このように、ウェブ上で信頼できる闘病情報を探すこと自体が、最近、ますます容易ではなくなってきている。そこで、さまざまなノイズをシャットアウトするバーティカル検索エンジンが、それも意味解釈能力を持つようなエンジンが求められていると思う。米国ではHealthLineやHealiaなどがすでに一定の実績を持っており、さらに上述の次世代検索エンジンも出番を待っているのだが、まだ日本語対応のものは存在しない。

とりあえず闘病体験情報について、われわれはTOBYOのバーティカル検索機能「TOBYO事典」を提供するつもりだが、医療情報全体への取り組みも今後必要になるだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>