医療提供のロングテール・モデル

HealthLongTail

先週、Health2.0ムーブメントきっての理論家であるスコット・シュリーブ医師が、次世代医療のイメージを、Web2.0のロングテール論になぞらえて発表した。まず上図を見ると、縦軸に患者アクセス数、横軸に提供治療法数をとったグラフ上に、ロングテール曲線が描かれている。従来たいていの患者は、「伝統的な医療業界」(たとえば診療所)から処方箋を受け取るなど、ある一定の限定された治療方法を提供されて満足していた。一般的な診療所の場合、およそ150から200程度の治療方法が提供されていると言われている。

これに対し、Carolのようなオンライン医療ショッピングモールの場合、理論的には数千の治療方法を提供できる。今後ますます、医療に対するニーズはパーソナル化されていくと見られているが、従来の医療業界ではこのパーソナル化にみあう提供治療方法の量的拡大に、容易には対応できない。そこで従来の「伝統的医療業界」にはない、新しい医療サービス提供を目指す、新しい業態やプレイヤーが多様に生まれてくる必要がある。これら「医療の新参者」が担う医療サービスは、テール方向へ向け伸びて行き、多様化する消費者・患者の医療ニーズに対応することが期待されているわけだ。

次の図では、「価格」と「医療サービス提供連続体」の二軸からなる平面上にロングテールが描かれている。普通、たいていの消費者は診療所や病院へ受療訪問して必要な医療サービスを消費しているが、これらの他にリテール・クリニック、オンライン診療などさまざまな新規業態が出現しており、それらは価格もサービス内容も異なる。今後も、伝統的な「対面診療」をほとんどの消費者は望むだろうが、中には時と場合に応じて、臨機応変に医療サービスを受けたいと望む消費者も増えるだろう。自分の都合や時間的コストなどを勘案して、消費者は多様な医療サービスの中から自由に選択したいと考えるようになるだろう。最早、画一的な医療サービスでは消費者のニーズには対応できないのだ。

HealthLongTail2

すでに、リテール・クリニックはテイクオフ寸前まで来ているが、今年に入って、米国ではオンライン診療サービスがにわかに注目され始めている。特に大手の医療保険会社が積極的に実証実験など準備を進めており、オンライン診療に対応する医師など人材不足が深刻になっているとも言われている。また、「人力医療情報検索」を売り物にする「OrganizedWisdom」の「LiveWisdom」のように、従来の医療業界のアウトサイダーがウェブ医療相談サービスに低価格で乗り出す動きもある。

これらはおおざっぱに、以下のように要約できるだろう。

1.「伝統的医療」は、今後も従来のサービス提供を継続するだろう。
2.従来サービス以外の新サービスは、医療業界アウトサイダーによって、テール方向へ向けて開発が進められる。
3.結果として、医療サービスは質量ともに多様化し、消費者の選択の幅は拡大する

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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