ワンストップ医療情報検索をめざすHealthLine

HealthLineLogo

1999年にローンチしたYourDoctor.comは、2005年11月装いを改め、HealthLineとして再スタートしました。ちょうどアメリカ中でWeb2.0が熱気を帯びて台頭していた時期であり、「医療分野での2.0が来た」という受け止め方がされたと記憶します。しかし、たしかにタギングやユーザーレビューなど、いくつか2.0の特徴を備えていましたが、むしろそのことよりもHealthLineが最初から医療専用のバーティカル検索エンジンを志向していたことが私達にとっては新鮮だったのです。

たとえばGoogleで「糖尿病」という検索ワードで検索すると、272万件という検索結果が表示されます。これは一生かかっても読みきれない情報量ですし、もちろんその中には医療情報とは呼べないものから怪しげな健康食品まで「ゴミの類」が大量に混じっているのです。しかも問題は、一応しっかりした医療情報のように見えても、一体どれを選択してよいかがわからないことです。めざす医療情報を求めて片っ端から見ていくほかありませんが、当然、手間も時間もかかります。まるで私達は「情報氾濫における情報飢餓」 というパラドックスの中に放り込まれているかのようです。

HalthLineはこれらの問題を解決するために、数千人の医師を確保し、五年間にわたってWeb上の医療サイトを信頼性の観点から調べ上げ、その結果信頼できるとスタッフ医師が認めたサイトだけを検索することにしたのです。ですから、最初からゴミを除外されたクリーンなデータから検索結果を取り出すことができるわけです。きわめて合理的です。ですがこれは大変な時間とコストがかかるプロジェクトになります。HealthLineはこれまでに何度か大口の資金調達に成功しており、その出資者には日本の三井物産も含まれます。

2005年11月時点から見ると、HealthLineはWeb検索から出発して、医療ニュースや医療事典などのデータを外部調達し、その検索の幅と厚みを大きく広げてきています。つまり多様な医療検索ニーズを持つユーザーに、「サーチ・プラットフォーム」と呼ぶ医療検索のワンストップサービスを提供しているといえるでしょう。さらに医療情報検索という一連のユーザー行動を深く洞察した上で、単なる検索機能の寄せ集めではなく、ユーザー視点に基づき検索機能を有機的に再編し、最適化しようとしています。
HealthMap
上図は「がん」をWeb検索した結果表示される「ヘルスマップ」ですが、「がん」に関連するさまざまな医療情報がマップという視覚的表現で示されています。つまりユーザーは「がん」に関連する用語、事柄や概念の全体像を一目瞭然で把握することができるわけです。これは「検索」をその機能だけで捉えるのではなく、「一連のユーザー行動として検索を見ると何が必要か」という発想の成果であるように思われます。

このようにHealthLineは「医療専門のバーティカル検索エンジン」を起点として、包括的な医療検索プラットフォームへ進化しようとしています。ビジネスモデルはB2Cのサービスを広告で稼動させながら、他のWebポータルや企業、ヘルスプランへとB2B旋回し始めました。

医療情報検索の場合、Googleのような汎用サービスでは十分には対応できません。しかし、一歩進めてバーティカル検索エンジンを作ったとしても、それだけでもなお不十分なのです。 医療が高度に専門的な学問体系であるということは、それは同時に厳密に定義された専門用語の体系でもあります。たとえば病名、症状など。これらは一般の生活者には理解しがたいまでに、高度に細分化されています。なおかつ日本の場合、難解な漢字で病名表記される場合も多く、とにかく「読めない」ものも多数あるのです。つまり、言葉、キイワードで検索すること自体が、実は非常に難しいという問題があります。「お腹が痛い」という状態を、正確に言語化することが難しいし、まして厳密な医学用語で言語化することなど至難の業なのです。そして言語化できなければ「検索」はお手上げです。

HealthLineは「セマンティック・タクソノミー」という言葉を使い始めましたが、医療における「検索」の問題は、本当は「意味とコンテクスト」をどう解釈するかが重要です。しかし、考えてみれば、この「意味とコンテクストの解釈」こそが医師というプロフェションの中心的な仕事なのかもしれません。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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