情報大航海プロジェクト

昨日のエントリーで記したように、ITによる医療の効率化の現状を考えると、たくさんの方針や目標値が立てられているものの、レセプト電算化のようにその進捗は遅々として進みません。しかし他方、昨年、経産省によってぶち上げられた「情報大航海プロジェクト」では、またもや情報技術進化のナイーブな「夢」が語られています。このあたりの現実と「構想」の断絶感は、眩暈なしに直視できないものがあります。

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「情報大航海プロジェクト」は経産省が中心となり80数社が集まって、Googleに対抗する新しい国産検索技術を開発しようという国策プロジェクトです。経産省、そして当初三年間に150億円の大予算投入と来ると、なにかデジャブ(既視感)に襲われます。かつて失敗した国策プロジェクトの数々の亡霊や悪夢が、21世紀になってもまだ反復して呼び出されるのか、との思い強しです。それとネーミングにひっかかります。かつて、これとほとんど同じネーミングを、およそ10年ほど前、インターネット登場期に某大手広告代理店が使用していましたね。その意味でも強度の既視感があるのです。

このプロジェクトが発表されて以来、たくさんの批判がブロゴスフィアに登場しました。それぞれ説得力のある論旨ですが、ここで繰り返すこともないでしょう。しかし「産学官」などと「順序」は以前とは違えど、三つの要素の「組み合わせ」は同じという、この古い紋切り型のスキームをそろそろやめにしませんか。もう「官」が旗を振る時代は、前世紀で終わったのではなかったのでしょうか。しかもこの旗の下に集まるメンバーを見ると、新顔もなくはありませんが、錚々たるエスタブリッシッシュメント常連メンバーの皆様。ここから何か新しいことが始まる可能性があるのでしょうか?。

そして、このプロジェクトの医療分野では「レセプト情報や診療情報、個人の健康情報などが電子化され、データベースによって各病院、患者などで共有することになれば、新たな医療サービスが可能になるのと同時に、医療費高騰の抑制も期待できる」と説明されています。たしかレセプト電算化は、政府・与党医療改革協議会 「医療制度改革大綱」で目標年次まで決定されたはずですが。いつから、この「情報大航海プロジェクト」で扱うようになったのでしょうか。

これら国策プロジェクトや「医療IT計画」を見ていると空虚な寂寞感に襲われます。「情報大航海プロジェクト」は、「産学官」の「オールジャパン」体制で取り組まれるとのことです。どうやらこの「産学官でオールジャパン」などという時代がかった発想が、この日本をますますだめにしていくような気がするのです。


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