イスラエルからHealth2.0: iMedix

iMedix

一昨日、イスラエルのテルアビブからローンチしたiMedix。同社は今年一月に設立され、医療情報バーティカル検索エンジンと患者SNS機能を併せ持つユニークなサイトを開設した。「より良き医療のディシジョン・メイキングのために、人々が医療情報を簡単に探し出し共有できることを可能とする、コミュニティ・パワードな検索エンジン」の提供をめざす。

この「コミュニティ・パワードな検索エンジン」と呼ばれるものが、iMedixが提供するコア・ベネフィットなのだが、これは検索結果に対するユーザー評価を分析しウェブ上の医療情報をランキングするもので、iMedixはこの検索エンジンの特許を申請しているようだ。

次に患者SNSだが、会員同士がリアルチャット機能を使ってコミュニケーションするところがユニークだ。しかしピア・トゥ・ピアのチャットということになれば、それ以外の会員は情報共有ができなくなる。このあたりをどう改善していくのだろうか?。また、チャットの性質からくる「情報の断片性」という問題もあるだろう。

改善すべき問題はいくつかありそうだが、それにもかかわらずこのiMedixは、今後のHealth2.0を考えていく際にかなり重要な潜在的可能性を持っていると思える。それは、端的に言って「ネット上の医療情報をみんなで整理していく」という方向性であり、これは単なるバーティカル検索を超えた「ソーシャルサーチ」という次世代検索機能のありかたを、ぼんやりとではあるが指し示していると言える。

「ソーシャルサーチ」という言葉を最初に聞いたのは、たしか昨年春先、GoogleCo-opがローンチされた時であった。あの当時、GoogleCo-opとGoogleHealthが混同され、マスコミでは「GoogleHealthがローンチされる」と報道までされたものの、結局、出てきたのはCo-opの方であったので、みんな肩すかしをくらったことが思い出される。このGoogleCo-opにはHealthセクションがあり、医療分野のバーティカル検索機能に専門医療者からなる評価者の検索結果評価が付加されたのである。このことをGoogleは「ソーシャルサーチ」という言葉を使って説明していたと記憶している。

つまりソーシャルサーチとは、バーティカル検索エンジンにユーザーの情報評価を加えることを指すが、さらに「ネット上の医療情報をみんなで整理していく」ことまで含んでいると理解されてよいだろう。GoogleCo-opの場合は、この「みんな」とは専門家のことであったが、iMedixの場合は患者や生活者など一般ユーザーになる。専門家と一般ユーザー。これは両方とも評価者として必要だ。もちろん専門家は、その医療情報が正しいものであるかどうかを判定するために必要だろう。だが、医療情報自体がいくら正しいものであっても、一般の生活者にわかりやすく理解されなければ、それは利用価値の高い医療情報とは言えないのである。そしてこの「わかりやすさ」を判定するのは、言うまでもなく専門家ではなく一般ユーザーの方がふさわしいのである。

このようにソーシャルサーチを志向するという観点でiMedixを改めて見るなら、「検索エンジンをコアとして、その周りにコミュニティを配置する」という布陣が、単に「検索エンジン+SNS」という足し算ではなく、「コミュニティによって検索エンジンをパワーアップする」という方向へ向いていることがわかる。検索エンジンとコミュニティということなら、先日取り上げたTauMedがある。エントリー中では「他のSNSと違い、高機能バーティカル検索エンジンがむしろサービスの軸に位置しているように思える」と記してあるが、このTauMedのケースでは検索とコミュニティの両機能は画然と分けられ、あくまでも「検索エンジン+SNS」という「機能の足し算」が見て取れるのみである。

検索エンジンがSNSの付録機能のような位置づけにあるのではなく、サイトのコア機能となり、ソーシャルサーチが立ち上がった時、患者SNSは従来とはまったく異なる次元へ向けて飛翔する。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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