医療、インターネット、ブログ


「今さら」の感もなきにしもあらずだが、先日、発表された「Blogs in Plain English」を見ながら、改めてブログの存在意義みたいな事を考えさせられた。ちなみにこのショートムービーを作ったのはcommoncraftで、いつもながら素晴らしい出来である。最近では「ブログ限界論」みたいな議論もあるようだが、まだそれを言うのは早すぎるような気がする。個人的な「飽き」や閉塞感をブログ自身のせいにするのは勝手だが、それでは生産的な議論にならない。特に医療分野におけるブログの活用を考えると、まだまだこれからだとも思える。

先週米国で発表されたHarris社とWallStreetJournalの共同世論調査によれば、生活者が医療情報を知る手段としてインターネットは「医師」について第二位であり、他のメディアを圧倒的に引き離している。このまま行けば近いうちに「医師」さえ抜くのは確実だ。何か医療や健康問題について知りたいとき、「とりあえずインターネットで調べよう」というスタイルは、米国のみならず日本でも定着し一般化していると考えてよいのではないか。そして、その生活者側の検索技術も、インターネット経験値が増えるにつれ高度化していると見て間違いないだろう。

このように医療分野においてインターネットは、テレビや新聞などマスメディアを既に凌駕する存在になってきている。もともとインターネットと医療は親和性が高いのではないか、という仮説を当方は以前よりぼんやりと持っていたのだが、最近、ますますその思いは強固になってきている。特に情報の「発信者-受信者」という関係が固定されていた時代(1.0時代)が終わり、医療をめぐるすべての関係者がより能動的にネットにコミットするようになり、単なる医療情報フローの問題を超えて、「医師-患者」関係や制度の在り方までをネットが変えようとしている今日の状況を目の当たりにしてみれば、その思いは一層強いのである。

だが、特に日本の医療分野において、2.0への移行過程は決してスムーズではない。まだまだ「1.0」の尻尾を引きずったままであるか、あるいは意図的に「ネット進化を見ないようにしよう」とでも決心したかに見える団体・機関・個人も多い。これら「進化の袋小路」にはまってしまった人々にとっては、どうやらインターネットが誰でも容易に情報発信でき、誰かの許可を得る必要もなく、誰でも気軽に自分の経験や知識を発信するものであっては困るらしいのだ。妙な話だが、医療分野でのインターネット利用を促進するどころか規制し、何の必要もない「サイト認証」や「資格制度」まででっち上げるような連中まで存在している。

はたまた「サイト構築には高度な技術と高い予算がかかる」とか、「医療関連サイトを立ち上げるには法的規制など特別の判断が必要」などと根も葉もない虚言で、ネット事情や法的規制環境に疎い医療機関や医療関連団体を、半ば脅すような連中さえ見受けられるのが現状だ。

これらは、医療分野におけるインターネット利用を委縮させ、例をとれば医療機関サイト・ホスティングによる囲い込みや、「認証手数料」や「受講料」を恣意的に設定すること等を通じて、本来は不要なはずの社会的コストを増大させていることになる。

ブログは「高度な技術や高い予算」など必要とせず、誰もが簡単に情報発信できるソーシャルメディアである。たとえば医療機関だが、カタログや看板のような1.0サイトを作って自己満足せずに、ブログの活用を考えてはどうか。地域の生活者とコミュニケーションすることをブログで実践してはどうか。「ウェブ看板屋」にまかせずに、自分たちの考える医療サービスをブログで提起してはどうか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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