個人向け遺伝子ビジネスの台頭

knome

今月11月27日、米国マサチューセッツ州ケンブリッジを本拠に、世界初の個人全ゲノム配列解析サービス会社となるKnomeがローンチした。23andMeなどSNPチップを使用したゲノム解析サービスが、せいぜい20種類の病気リスク評価に限定されているのに対し、Knome社は全ゲノム配列解析によって約2000種類を分析できるという。

ヒト・ゲノム・プロジェクトは12年の時間と3000億円のコストをかけ、2003年にその目標を達した。その後、ゲノム解析技術は高速に進化し、劇的なコストダウンをもたらしている。この秋、世界各地で多数の個人向けゲノム解析サービス企業がローンチしているが、この背景にはこのコストダウンが効いているようだ。

「Knomeの目標は、個人向けゲノム・サービスにおける標準を打ち立てることだ。われわれはクライアントに最新の配列技術、独自の解析エンジン、そしてセキュリティ・ソリューションを提供する。また最高のゲノム学者たち、医学者たちにアクセスしている。分析、プライバシー、そして継続的なクライアント・サービスは、実際の配列技術と同じくらいわれわれにとって重要だ。」

と同社CEOのジョージ・コンデ氏は述べている。同社はハーバード・メディカル・スクールとマサチューセッツ工科大学のゲノム研究者、医師、生物情報学者たちの参画を得ており、当面、個人向け全ゲノム配列解析サービスを3万5千ドルで販売する予定。

上のビデオは、アイスランドの個人向けゲノム・サービス会社であるdeCODEme社のプロモーションビデオ。ゲノム解析サンプルとなる頬の粘膜細胞採取の方法を実演している。簡単そうではあるが、何か見ていて「痛そう」な感じがする。一方、日本でもゲノム・サービス事業は立ち上がりつつある。昨日の日経夕刊「健康シンドローム」欄には「遺伝子から体質自覚」という見出で、日立ソフトウェアエンジニアリングのゲノム解析サービスが紹介されていた。

このような個人向けゲノム・サービスの台頭は、Health2.0コミュニティでも次世代医療サービスとして注目されている。だが問題も多い。前のエントリーで基本的なポイントは上げておいたが、そのほかマーケティング上の致命的な問題があると指摘されているのだ。それは、血液検査など他の検査サービスと違い、ゲノム解析の場合、一回の検査で済むので顧客リテンションを確保できないというものである。たしかに、たとえば血液検査なら何回も繰り返しおこなわれるわけだが、ゲノム配列は変化しないので一回調べれば繰り返す必要はない。つまり、顧客一人につき一回しか販売機会がないことになる。

このあたり、また改めて考察を加えたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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