患者SNSレビュー: TauMed

taumed

TauMedは今年の四月にローンチされた患者SNS。だが、他のSNSと違い、高機能バーティカル検索エンジンがむしろサービスの軸に位置しているように思える。患者SNSは今年に入って、特に米国で多数ローンチされており、他の同類サイトとの「差別化」がサイト戦略の中心課題になりつつある。

このTauMedの場合、優秀な検索エンジンが重要な役割を果たしているが、これは通常のSNSから見ると特異なスタイルといえよう。なぜならSNSである限り、当然ユーザーに提供するコア機能はコミュニティ&コミュニケーション機能であるはずなのに、TauMedでは検索など医療情報操作機能がメインになっているからである。つまり、ユーザーが医療情報を「検索、保存、共有」することに重点が置かれている。

一方、SNSとしての基本機能も一通り用意されているのだが、それも医療情報操作機能の一部というニュアンスが強いように見受けられるのだ。

まず、ユーザー登録すると「My Health Space」と「My Health Share」のページが生成される。「My Health Space」は、いわばユーザーのホームページであり、ここで自分が必要とする医療情報の操作・整理がすべておこなえる。「My Health Share」の方はブログと考えればよいだろう。自分の医療体験を日記として記録し、コミュニティ全員で共有できる。

このサイトに収載されているコンテンツはブログ、ビデオ、コミュニティなどUGCだけではなく、外部から調達した一般的な医療情報それに医療ニュースなどもある。つまり、サイト内部に、ある程度完結した「医療情報圏」を作っているわけで、こうなるとWebMDのようなポータルサイトのミニチュアであるとも言える。その辺りの「割りきりの不十分さ」と言うか、「中途半端さ」が、このサイトの力を弱めていることは否めないのである。ユーザーは「中途半端な総合性」などには見向きもせず、むしろ「シンプルな機能」を評価する傾向を強めているからだ。

さて、このTauMedだが、ビジネスモデルはどうなっているだろう?。トップページにGoogleの大きめの画像広告が二か所掲出されているところを見ると、やはり広告ベースであるように思える。患者SNSのビジネスモデルは、一般に医師SNSのようなプロフェッショナルSNSよりも難しいはずだ。もちろん「患者の体験」情報が価値を持つことは間違いないのだが、それをマネタイズすることが容易ではないからだ。

医師SNSのようなプロフェッショナルSNSの場合、専門的知識や専門的経験の集合的集積と見なせるから、あとはその出力形態を工夫し、「買い手」を発見して外部に繋ぐ強力な営業部隊が存在すればマネタイズは可能となる。だが、患者SNSの場合は、これとはかなり違った発想が必要になるのではないか。おそらく「患者体験を外部に情報提供する」という単純発想ではダメだろう。

患者SNSのビジネスモデルはまだ見えてこない。しかしPatientLikeMeやSophia’sGardenなどを検討してみると、通常とは違うコンセプトを持ったSNSであることがわかる。だがこれはかなり特殊な方向性であるから、普通の患者SNSには向かないだろう。

日本で患者SNSがほとんど存在しない理由も、やはりこのビジネスモデルの問題が大きいのかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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