増える医療ビデオ

healththeater
最近、ウェブ医療情報サービスでビデオを利用するケースが激増している。従来、テキストと図版中心であった医療コンテンツの在り方が、ここへ来て大きく変わりつつある気配である。その原因としては、YouTubeの成功とネット接続スピードの高速化の二点が指摘されている。先月末の「USA Today」では、ウエブ上における医療ビデオの増加動向を、次のように整理している。

  1. 一般的な医療サイト:WebMDからMayoClinicに至る一般的医療サイトにおけるビデオライブラリーの拡大
  2. 特化型医療サイト:アメリカがん協会サイトや自閉症の「Autism Speaks」のような特化型医療サイトにおけるビデオコンテンツの増加
  3. 医療ビデオ専門サイトの増加:ICYouHealthTheaterTVeMedTVなどのローンチ。
  4. 医療ビデオブログ:個人医療体験のビデオによる共有

以上の動向のうち、1と2は一般的傾向として理解できるが、特に注目すべきは3と4である。この二つは相互補完的な関係にある。つまり発生ベースのUGCとしての4が、その共有プラットフォームとしての3に投稿されてアテンションを拡大する、という構造になっている。

ところで、医療ビデオ専門サイトが収集しようとしているビデオコンテンツは次のようなものである。

A.医療教育ビデオ
B.闘病(患者体験)ビデオ
C.医療機関、医療者のプロモーション・ビデオ

ICYoueやMedTVは上記A、Bが中心となっているが、HealthTheaterTVではCも重要な収集アイテムとして位置づけている。また自社制作コンテンツにも注力しているサイトと、UGC中心で行こうとするサイトの違いもあり、これはプロモーション・ビデオ制作をビジネスとするかどうかが分かれ道であるようだ。つまり「制作+メディア」と「ソーシャルメディア」という方向性の違いがある。
(注:MedTVはビデオ専門というよりも、総合的な医療情報提供を志向している側面を持つ)

ICYouは9月にローンチしたばかりだが、どちらかと言えば「ソーシャルメディア」を志向する企業であり、徐々にコミュニティ機能を付加しようとしているようだ。どのような形へ進化するかまだ不明な部分が多いが、あるいはビデオによる患者体験共有をコアとする患者SNSへ進む可能性も排除できない。これは以前指摘したことでもあるのだが、患者にとって、ビデオ日記形式の闘病記の方がテキスト形式よりも入力負荷が少ない場合はあるだろう。

今後、一層の増加が確実視される医療ビデオだが、問題はコンテンツそのものよりそのフローである。従来型のコンテンツ観に基づくWebMDやMayoClinicなどのレガシーサイトでは、コンテンツとは「自社占有権を宣言し、自社サイトに縛り付け、囲い込んでおくもの」であった。つまり自由にフローするものではなかった。これに対しTouTubeなど新興サイトではコンテンツとは共有するものであり、フィード、リンク、エンベディングなどによって、ウェブのあちこちにフローするものになった。

新興医療ビデオ専門サイトは、単に「ビデオ制作会社がメディアを持った」だけに終わらず、医療ビデオ共有による新しいサービスを生み出してもらいたいものだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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