イタリア発Health2.0: MyOpenCare

myopencare

MyOpenCareはイタリアで開発された英語ベースの患者体験共有サービス。まだ本格稼働には至っていないようだが、「Share Health Contents」とブランド・ステートメントに表示されているように、患者UGC(User Generated Contents)のプラットフォームを提供する。

患者UGCを利用するために、以下のツールが用意されている。

・H-Book
・Wi-Care
・E-Care Diary
・PHR

まず患者は、自分の病気に関するあらゆる「医療コンテンツ」をアップロードするように求められる。これにはテキスト、写真、オーディオ、ビデオなどすべてのタイプのコンテンツが含まれる。アップロードされた患者UGCは、「H-Book」と呼ばれる「本」にまとめられる。これは多様雑多な患者UGCを整理し、後で利用しやすいように見出しをつけたり、適切なリンクを付したりすることができるようになっている。この「H-Book」はまた、内容をすべてのメンバーか、もしくは特定メンバーに公開することをユーザーが選択できる。

次に「Wi-Care」だが、これはメンバーの体験や知識を共有するWikiのようなツールらしい。ユーザーはこれを使って「Public H-Books」という共有版H-Booksを共同して作成することもできる。いわば集合知を活用するためのツールである。

「E-Care Diary」はカレンダー形式のダイアリー。診察や治療の予定管理、服薬リマインダーなどに使う。PHRのほうは、病歴、薬歴、アレルギー、検査結果などのデータを記録する標準的なPHRのつくりになっている。あと「People Who Care」というツールもあるようだが、現時点では不明である。

以上がMyOpenCareの概要である。本格稼働していないので今は何とも言えないが、たとえばH-BookとWi-Careの関係など、若干のわかりにくさも残している。それぞれのツールにアサインした機能のイメージはなんとなくわかるのだが、ツール相互の関係がいまいちつかみにくい印象を受け取った。ただ、ユーザー生成コンテンツの収納保存のアナロジーとして「本」を使うなど、なかなかにユニークな発想となっている。全体として一種の患者SNSと言えなくもないが、メンバー同士に積極的な交流を促す仕組みはないようだ。

ある意味で当方が準備中のTOBYOと似た部分があり親近感を覚えた。これは一種の患者体験DBを患者参加のもとに作ろうとする試みであり、最終的にはその患者体験DBをバーティカル検索エンジンで活用する仕組みを提供することになるはずだ。それに対し当方のTOBYOは患者生成コンテンツをアグリゲートすることになり、コンテンツ自体をDBに収容する予定はない。このような条件を洞察してみると、以下のようなアプローチ方法が浮かび上がってくる。

  1. 外部で生成されるUGCをDBに収納する
  2. SNSに加入してもらい、内部で新たにUGCを制作してもらう
  3. 外部で生成されるUGCをアグリゲートする

このように、どうやら「患者体験の共有」をめざすウェブ医療サービスには、上記三つのアプローチ方法が見えているのではないだろうか。この三つのアプローチのうち、MyOpenCareは1であり、患者SNSは2、そしてTOBYOは3ということになる。以上の三カテゴリーはさらに、「あらかじめUGCが存在するケース」および「これからユーザーにUGCを生成してもらうケース」の二つに類別される。そしてこれらの条件も、その国や地域の医療文化によってかなりの差違があることもわかっている。

以上のような条件を複合マトリクスとして、UGC型の個別事業フィージビリティを評価することが可能かもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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