Health2.0とWeb2.0

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(by Scott Shreeve,”Defining the Ethereal with the Illusory”)
いよいよ明日20日、待望のHealth2.0コンファレンスがサンフランシスコで開催される。これにタイミングを合わせるかのように、スコット・シュリーブ医師が「多彩なHealth2.0」と題する「Health2.0白書」の執筆を開始し、その一部が公開された。

これらの動きを見ていると強度の既視感におそわれる。ちょうど2年前の9月だったと思うが、ティム・オライリー氏の「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」が、おりしも「第2回Web2.0コンファレンス」直前のタイミングで発表されたことが思い出されるからだ。

言うまでもなくこのオライリー氏の文書は、Web2.0を包括的に定義するバイブルにしてマニフェストとして、その後世界中で広く共有されることになる。今にして思うと、もしも「Web2.0」というネーミング、Web2.0ミームマップ、そしてこのマニフェストの「三点セット」がなかったら、Web2.0は随分と違う方向へ進むことになったかもしれない。

さてスコット・シュリーブ医師の「Health2.0白書」であるが、まず上のような対照表が出てきた。ご覧のようにWeb2.0とHealth2.0を対照している。まずWeb2.0側にリストされた7項目だが、これは上述したオライリー氏「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」を構成する七章のタイトルを持ってきている。(表中番号は本来の章の番号)

このようにスコット・シュリーブ医師は、Web2.0で提起された基本フレームを、医療に対応付け再構築するところから、Health2.0白書を始めようとしている。つまりそのことは、Web2.0の技術的成果を単純に医療に導入することではなく、Web2.0で提起された方向性や問題意識を医療改革全体に重ね合わせることを意味している。

ティム・オライリー氏は「マニフェスト」の中で「Web2.0とは技術ではなく態度である」と指摘しているが、このように「世界に対する新しい態度」として、Web2.0はウェブやコンピュータ業界のみならず、他の様々な業界、領域、分野へと影響圏を拡大する可能性を持っていた。スコット・シュリーブ医師はこのことに着目し、「Web2.0は社会的、文化的、そして政治的でさえある現象なのだ」(「白書」第一章「アメリカの医療危機とHealth2.0の出現」)と述べている。つまり「新しい世界観」としてWeb2.0をとらえ、当然それは医療改革にも応用できるはずだと考えているわけだ。

上の対照表はそのような意味合いで見る必要がある。だがこの表を眺めて、その対照関係がしっくり合わず、いくつか違和感の残るところもある。ただこれは今後、白書で詳しく論考が示されるようなので、それを待ちたい。翻訳もまだ冗漫だが、これも今後精緻化していきたい。

Health2.0は、たとえばOrganizedWisdomであり、Sermoであり、CureHunterであり、その他、いわゆるWeb2.0の技術やアイデアをもとに作られたサービスとして、まず具体的に存在する。そしてこれら具体物の総体が、医療改革というベクトルを持つムーブメントとして姿を現しつつある。どうやら、このようなビジョンをスコット・シュリーブ医師は構想しているようである。そしてたしかに、OrganizedWisdomにせよ、Sermoにせよ、これら新しい医療サービスを開発した企業はすべて、医療改革という問題意識を切実に持っていることも事実なのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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