GoogleがWebMDを買収?

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今日のブロゴスフィアは、「GoogleがWebMDを買収するのでは・・・」との話題で騒然。しかし、アダム・ボスワース氏がGoogleを去るやいなや、見計らったようにこんな話が出てくるということは・・・・・と勘ぐってしまう。タイミングが良すぎるのである。

この話の出所は9月12日付け「CNN Money.com」で、アナリストの観測やアダム・ボスワース離脱の周辺情報などを含め、Googleが医療ウェブ市場で買収を含む新たなディールに乗り出すのではないかという記事を出している。

記事によれば、アダム・ボスワース氏のGoogle離脱は、Googleが買収を通じて医療業界へ乗り出すための事前サインだったのではないか、とのこと。また、Google Healthで自社内製化を追求したものの失敗し、手っとり早く実績のあるWebMDのようなサイトを買収することになるのでは、とのことである。

これに対し、昨年夏にローンチした患者SNSサイト「OrganisedWisdom」のブログでは、「もしもGoogleがWebMDを買うのなら・・・」と題する秀逸なエントリーを出し、三つの「仮説」を提起している。

1.(もしもGoogleがWebMDを買うのなら)それはGoogleが、世界の情報をオーガナイズするという会社の中核焦点で頑張るよりも、(Yahoo!のような)コンテンツ出版会社になろうとしていることを示すだろう。

2.(もしもGoogleがWebMDを買うのなら)それはGoogleが、結局、いかなる進行中の医療プロジェクトも他には持っていなかったか、あるいは内部に持ってはいても決して稼働することのないものであることを意味しそうだ。

3.(もしもGoogleがWebMDを買うのなら)それは他の医療関連会社やスタートアップ企業に巨大な機会を創出するだろう。なぜならYahoo!やMicrosoftやその他も、(買収に)遅れないようついて行くことを切望するだろうからだ。

(“If Google buys WebMD….”)

この三つの「仮説」のうち、Wisdom側も「1と2はない」と思っているはずだ。上記「1」仮説は、Googleのこれまでのビジネスモデルを否定しかねない。「世界中の知識情報をインデクシングしオーガナイズする」ことこそGoogleが目指してきたことである。それに対しWebMDは、典型的なWeb1.0の医療コンテンツ出版企業である。

ふつう「ポータル」と総称されているサイトと同じく、WebMDは多額のコストをかけプロ制作の医療コンテンツを買い集め自社サイト上に掲載している。それは、従来のリアル雑誌のような編集ビジネスとなんら変わるところはない。つまり、そもそもネット上で行う必然性がないのである。

次に「2」仮説だが、これは現にGoogle Healthの存在をわれわれは知っているのであるから、この仮説は否定されるだろう。そして「3」である。1と2の仮説が現実的ではないとして、それでもなお「GoogleによるWebMDの買収」があるとすれば、それがGoogleの変質に結びつこうがつくまいが、自分達スタートアップ企業はそのことを「市場機会」ととしてのみ捉えねばならないと主張しているのだ。「この9月はオンライン医療企業にとって、特大ニュースがある月になることはいずれわかるだろう」とこのエントリーは意味深に結んでいる。

Google Healthについて、まだ真相は闇の中である。だが、たしかにこのプロジェクトのこの三年間には「買収」という選択肢もあったはずだ。その候補としてHealthlineがありHealiaがあったはずだ。PHRを取ってみても多数の買収候補があったはずだ。だがなぜかアダム・ボスワース氏は、「買収」という手段を自ら封じてきたのである。

だが、何となくではあるが、アダム・ボスワース氏の考えもわかるような気がする。このブログでは、昨年暮れ以来のボスワース氏の発言をほぼ網羅的に採録してきた。これまでそれらを採録しながら少しづつ分かってきたのは、アダム・ボスワース氏にとって、Google Healthが新しいウェブ医療サービスを生み出すための徹底的な思考実験の場であり、なおそれが「苦闘」というレベルにまで達しているはずだという確信だ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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