アダム・ボスワース氏、Google辞任の波紋

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昨日、安倍首相の突然の辞任表明には驚いたが、それ以上に「アダム・ボスワース氏、Google辞任」のニュースは当方にとって衝撃的であった。さっそく昨日、今日と、ワシントンポストなどメインストリーム・メディアをはじめ、Health2.0関連ブロゴスフィアもこの話題を取り上げている。

2004年のプロジェクト起動以来、Google Healthプロジェクトはすでに三年強を経過しているが、いまだにアルファ版さえ公開されていない。当方のTOBYOも大幅に遅れているので、はっきり言って、他人様のことをとやかく言える立場にはないのだが。それにしても先月発表されたGoogle Healthプロトタイプ・イメージを見る限り、「こんなフツウのPHRなのに、なぜGoogleが多大な時間をかけているのか?」と誰しも首をひねったに違いない。

今日報道された記事を読むと、どうやらこの三年の間に、Google Healthは大きな開発路線上の変更を経験したようだ。当初それは、汎用検索エンジンよりも効率的で、しかも情報の信頼性をより一層担保する「医療情報特化型検索」機能の実現を目指していたらしい。

ところが昨年春先ごろ、この開発路線は「検索」から「PHR」へと大きく変更され、当初の「医療情報特化型検索」についての開発成果は、昨年5月、GoogleCo-opとして中途半端な形でリリースされることとなる。

では、この過程で何があったのだろうか。医療情報特化型のバーティカル検索エンジンということでは、一昨年の11月にHealthlineがローンチしている。先行するこのHealthlineは、大量の医療プロフェッショナルによる医療ウェブサイト評価データをベースに、医療特化型バーティカル検索エンジンとしての機能をほぼ実現しており、ほとんど同様のコンセプトを持つGoogle Health(実はGoogleCo-op)が、あとから追従するメリットがなかった可能性が強い。

さらに思い返すと、昨年3月から昨年5月にかけて、米国ブロゴスフィアやメインストリーム・メディアには「Google Healthリリース」のニュースが大量に流されていたのである。「USA Today」などでは、公開リリースの日付まで「Google首脳部の話」として掲載されていたほどだ。だが結局、実際にリリースされたのはGoogleCo-opであり、これは医療特化型サービスでさえなかったので、Google Healthに注目していた関係者は大きな失望を味わったのだった。

これら一連の事実を改めて時系列で整理してみると、どうやら昨年5月にGoogleCo-opとして登場したのが本来のGoogle Healthであったのだが、Healthlineが先に登場したこともあり、Google Healthプロジェクト全体がトーンダウンされたフシがある。それは昨年3-5月段階のGoogle Healthをめぐる広報の混乱からも推測される。

そして昨年末から、今度はアダム・ボスワース氏がGoogle Health開発リーダーという立場で、医療関連コンファレンス等公開の席へ登場し、直接Google Healthのアナウンスを開始するのだが、この時にはGoogle Healthはすでに「PHR」へと大きく路線変更されていたのである。

だがPHRとしてのGoogle Healthも、今回のアダム・ボスワース氏の離脱によって、先月発表されたプロトタイプ・イメージだけで終わってしまいそうな気配である。そう言えば、Googleは6月にGoogle医療諮問委員会を設置し、医療プロフェッショナル21名を外部招聘しているが、この諮問委員会とアダム・ボスワース氏率いるGoogle Healthチームとの関係はどうなっていたのか?。結局、何も明らかにされていなかったのである。

このあたり、何やらGoogle内部の確執めいた人的状況が浮かんでくるが、もとより当方には知る由もなく、またこれ以上の詮索も興味はない。

この20日サンフランシスコで開催される「Health2.0 Conference」のパネラーにはアダム・ボスワース氏の名も連ねられていた。主催者のマシュー・ホルト氏は「アダム・ボスワース氏Google Health離脱のコンフェレンスへの影響だが、Googleが出席することは現在でも確実であると思う。彼らはこれからも医療に向けて専念していくと確信する」とのコメントを発表している。

三宅 啓 INITIATIVE INC.


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