EU各国の「健康ICカード」導入状況

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(ドイツの健康ICカードGesundheitskarte。裏面がEU健康保険証になっている)
先のエントリーで、ブルガリアが来月から「健康ICカード」のテストプロジェクトを開始することを報告したが、実はEU全体で「健康ICカード」の導入は進められている。その状況を概観しておく。 (EUの場合カードとして「スマートカード」を使用している)

2004年にEUでは「The eHealth Action Plan」を策定し、2008年からEU加盟諸国が責任を持って医療ITを具体化することが決められた。その中でとりわけ医療分野のICカード利用促進を重視し、eEHIC(ヨーロッパ電子健康保険カード)の導入推進を決定し、具体的には2008年からこのカードを運用していく計画が策定された。

EU各国の取り組み状況

ドイツ

  • 2006年初から「Gesundheitskarte」(Good Health Card)のテスト運用開始。同年中に10万人にカード発行。
  • スマートカード仕様。表面はドイツ国民健康保険証だが裏面はEU健康保険証で、EU域内のどの国の医療も利用できる。被保険者写真、視認可読情報。
  • 救急時データ、健康保険資格オンラインチェック、電子処方箋、副作用情報

オーストリア

  • 2005年までにe-card導入
  • 社会保障カード:オーストリア電子政府構想で提供が予定されるすべての電子サービスのツールとして利用
  • 医療では健康保険資格のオンラインチェックのみに使用
  • 行政ドキュメントの電子サインにも利用可能
  • 2006年から医療情報を使う最初のアプリケーションの導入: 電子処方箋

ベルギー

  • 1998年、社会保障の「SISカード」導入。社会保険データといくつかの医療データを収納。
  • 2009年までに全国民に電子カードを発行
  • ベルギー電子政府構想で提供が予定されているすべてのサービスを利用できる

エストニア

  • 2002年から電子国民IDカードを発行
  • ネット上の電子政府ポータルサイトからさまざまなサービスやデータを利用できる
  • 医療関係では医療制度中央記録インデックスが利用できる。

フィンランド

  • 2007年、電子国民IDカードを全国民に発行
  • このIDカードでの認証により医療データへのアクセスが可能。

フランス

  • 2006年までに「Sesam Vital II」カードを導入
  • 15歳以上のすべての被保険者のための健康ICカード。セキュリティ対策として個人暗証番号に代わる生体認証データも含む。
  • 2007年から個人医療情報へのアクセスツールとしての運用開始

イタリア

  • ベネト地域、ロンバルジア地域における健康ICカード導入
  • 2005年末からは他の地域にも健康ICカード発行を開始

スロベニア

  • 2000年から2004年までに健康ICカード導入
  • 健康保険資格のオンラインチェック。個人データ書き換えができる電子キオスクを設置。
  • モデル地区を設定し、アレルギー、予防接種情報など個人医療データを扱うサービスの実験運用開始

スペイン

  • 2004年からアンダルシア地方で健康ICカードの実験開始。個人医療情報へのアクセス・ツールとして運用する。
  • 2006年から電子国民IDカード発行開始。
  • スペイン電子政府構想で提供されるすべてのサービスへのアクセスツールとして利用。

スイス

  • 2004年からモデル地域で健康ICカードテスト運用。
  • 個人暗証番号に代わる生体認証データ(指紋)を利用
  • 医療機関での電子支払い機能を付加
  • このカードに収納が義務つけられるデータとして、健康保険、救急、電子処方箋データが指定されている。

以上のようにEU各国では、健康ICカードを医療情報のメインツールとして活用する取り組みが進められている。もちろんこれら各国で導入されているカードはEU基本共通仕様要件を充たしたものであり、クロスボーダーなEU全域での利用が可能となっている。

だが、上記リスト作成のために今回利用したのはドイツ保健省のデータなのだが、イギリスが入っていないのが気になる。イギリスの状況は後日報告を待たれよ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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