TOBYOの背景

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日本全国「夏休みモード」に入ろうというこの週末だが、この酷暑厳しき折、TOBYOアルファ版リリースへ向け、スタッフの作業は続いている。なんとか今月中のアルファ版リリースまでもって行きたい。このブログでも、これからTOBYO自体についてのエントリーを、徐々に増やして行くことになるだろう。

TOBYO開発の背景となる事実経緯

数年前、株式会社イニシアティブを起業したとき、われわれは事業ドメインを「医療」と定め、マーケティングとWebの「二つのビジネススキル」で、新しい医療サービスを開発して行こうと構想を立てた。そのとき最初に取り組んだのが、米国ピッカー研究所が提唱し、米国HCAPSや英国CHIなどの国家プロジェクトとして、既に取り組みが進行していた「患者経験調査による医療機関評価」であった。新サービスをPSI(Patient Survey Initiative)と命名し、開発に着手したが、さまざまな理由からこのプロジェクトをその後断念せざるを得なかった。。

だが今にして思うと、TOBYOのルーツはこの最初のプロジェクトの中にあったと言えよう。医療における患者経験(体験)の重要さを、われわれはこの最初のプロジェクトで学び、そのことが「患者体験の共有」というTOBYOのコンセプトへ真っ直ぐにつながっていくのである。

その後、大手病院チェーンのWebプロジェクトなどに関わったが、結局、2005年の夏にWeb2.0に出会い、すべてが変わってしまったのである。このWeb2.0との遭遇がなければ、おそらくTOBYOは生まれることはなかっただろう。だが、Web2.0との邂逅からTOBYOプロトタイプ・アイデアの誕生に至るまでの道のりは、決して短い距離ではなかった。2.0と医療をどのように架橋するかで、ずいぶんと思い惑い、試行錯誤を重ねた。

TOBYOの原型は、ちょうど一年前の昨年8月初旬に、偶然、思い浮かんだ。それは「UGCがあるなら、PGC(Patient Generated Contents)があってもいいのでは」とふと思い立ったことから始まった。そしてちょうど、実は「昨春、父の胃がん発見。セカンドオピニオンを経て夏には手術検討。秋の初め手術入院」という個人的な闘病体験が同時進行していたことも、TOBYOを作ろうと思い立った理由のひとつになっている。

残念ながら父は、癌研有明病院での胃全摘手術がうまくいかず、昨年10月15日に永眠した。この一連の父の闘病体験は、何か釈然としない割り切れないものでありながら、さりとて「医療過誤」と大声で責任追及までするのも躊躇せざるをえないような感もあり、いまだに当方の心にひっかかっている。

父は82歳の高齢だったが、Webで他の胃がん患者の闘病記を探し、自分の症状と似たケースを熱心に読んで参考にしていた。だが、Webで目指す闘病記を探すのは骨が折れるらしく、TOBYO構想を私が説明したとき、「そいつができれば、こんなに苦労しなくても良いわけだ」と喜んでくれた。

父の闘病体験を通して、患者が必要としているのは無味乾燥な医療情報のみならず、むしろ実際に同じ病気を体験した患者の体験情報であることを、切実に思い知らされたのである。これらは父が教えてくれたことであり、TOBYOの中にしっかりと生かしていかなければならない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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