消費者が医療選択に使う情報ソース

DATA
調査会社フォレスターリサーチ社が今月、「消費者の選択に影響を与える医療情報提供ツール」と題する調査レポートを発表した。

それによると、ほとんどの消費者(60%)はロコミで病院や医師のクオリティを評価している。また27%の生活者がオンラインの情報ソースを使用しており、中でも消費者はどちらかと言うと、医療保険会社のWebサイトを利用する傾向がある。

一方、オンラインソース利用者の41%が保険会社サイトの病院評価ツールを利用しており、46%が医師評価ツールを利用している。医師情報を調べた回答者のうち35%は、患者によるフィードバック情報が最も意志決定に重要であったと答えた。

ちなみに、「病院での待ち時間」は患者の病院選択において重要なファクターではなく、これを選択した回答者は1%にすぎなかった。

フォレスターリサーチはこの調査レポートの結論として、「保険会社や医療情報提供ベンダが成功するためには、消費者に最もユーザフレンドリーで包括的なエンド・トウ・エンドのツールを提供し、消費者が一番欲しがる患者フィードバック情報への確実な取組みが必要。」としている。

この調査結果を読みながら、ニつのポイントを考えた。一つは日本における医療選択情報の貧困についてであり、今一つは「エンド・トゥ・エンド」な患者フィードバック情報の重要さである。

まず病院や医師を選択する手だてが、日本においてまだまだ少ないのである。このことが患者とその家族にとって、いまだに最大の問題になっている。今回調査でも回答者の60%が「ロコミ」によって医療を選択しているが、27%はインターネットで提供される各種ツールを利用している。日本ではこの各種ツール自体がほとんど存在しないのだから、「ロコミ」依存率は米国を上まわるはずだ。

以前から指適しているように、日本では医療機関検索サービスは多数存在するが、これらは住所や診療科目などいわば「看板情報」にすぎす、病院や医師のクオリティ比較を可能とするような情報提供サービスは皆無である。この春から始まった自治体による医療機関情報提供も、その地域の医療機関を網羅的に情報公開する意味はあれど、患者の医療選択への寄与には程遠い。

これら医療選択情報サービスやツールは、この調査レポートを見ても納得感があるように、本来は保険会社が提供すべきである。日本の場合、健保組合や最近医療保険に注力しはじめた生保などが、もっと積極的に取組むべきものだろう。

そして「エンド・トゥ・エンドな患者フィードバック情報」である。「実際に医療を体験した患者が、病院や医師をどう評価したか」が最も患者側が欲しい情報であり、この情報を伝える仕組みをどう作るかが、ネット医療情報提供サービスの最重要課題だと当方は考えてきた。

米国でもこれまでアウトカム情報や患者満足度データを「センター」で集約・集計し、ランキングをはじき出すサービスは多数存在したが、患者の医療選択時の意志決定に最も強い影響力を持つのは、実は患者の定性的なフィードバック情報なのである。
Source:
“Healthcare Provider Tools Sway Consumers’ Choices”

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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