Second Lifeブームの終焉

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日本語版がリリースされ大ブームの様相を呈しはじめたSecond Life。だが米国では、「ブームの終焉」が報じられはじめた。(写真は閉店したアメリカン・アパレルのバーチャルストア)

どうもこの「Second Life」という代物、日本ではエスタブリッシュメント側で受けがよろしいようだ。広告、マスメディア、金融など「Web2.0に乗り遅れた」皆様方が、大挙してブームに加わるのを見ていると、何というか、奇異の念を抱かざるを得ない。まことに奇っ怪千万なのだ。

米国では、先週LAタイムズに掲載され話題になった酷評記事によって、ブームとしてのSecond Lifeは幕を閉じたと言われているが、この間、メディアがSecond Lifeをどのように取り上げてきたかを整理すれば、そのことは一目瞭然となる。

■2002年11月 ”Time”
「驚くほどに実物そっくりな3Dバーチャルワールドが、今、インターネットで進化している。」

■2003年6月 ”Time”
「Second Lifeは、なんでも好きなことができ、好きなものを建てられ、好きな人物になれるオンライン3Dバーチャルワールド」

■2007年4月 ”Time”
Second Life創設者フィリップ・ローズデール氏が「タイム誌の100人」に選出される。

このように、一時期マスコミで好意的な評価もあり、そのことが「ブーム」を形作ってきたと言えるが、実は昨年からSecond Lifeに対する論評はにわかに厳しく変化してきたのだ。

■2006年7月2日 “Forbes”誌
「アバターは、現実世界のブランドに好意的になるよりも、性的行動やいたずらをすることの方に興味があることがわかった。」

■2007年6月11日 ”Business Week”
「結局、Webベースのパラレルワールドは汚く散らかった市場で、そこでは貴方はアダルトものを漁り、デジタルストアを破壊する裸でウサギ頭のアバターのようにしか見えない」

■2007年7月14日 ”LA Times”
「Second Lifeがデビューして4年経ったが、マーケター達は一杯食わせられ、お金と時間を浪費した」

LAタイムズは同時に、SecondLifeに一年前オープンしたアメリカン・アパレルのストアが店じまいし、他にも多数の進出企業が撤退したことを伝えている。ブロゴスフィアではTechCrunchJapanの「Second Lifeを最後に出る会社は電気を消していってください」という秀逸のエントリーが、企業撤退の背景を詳しく報じている。

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さてどうやらSecondLife狂騒曲は終焉を迎えつつあるようだが、冒頭にも記したように、日本ではなぜかエスタブリッシュメント企業に大受けしているのが奇妙だ。その原因として考えられるのは、やはり「バーチャルワールド」ということの「わかりやすさ」にあるのではないだろうか?。そしてこの「わかりやすさ」は「現実のメタファーであり、アナロジーである」ことに由来すると思われる。「現実」という具体的な対応物があるからわかりやすいのだ。想像力を必要としないのだ。

ここ2-3年のWeb2.0ムーブメントに、消極的な反応しかしなかったエスタブリッシュメント側のこのSecondLifeに対する反応の早さは、そうとでも理解しなければ説明不能だ。だが、Web2.0ムーブメントが知識・情報のありかたから、ひいては社会・経済・文化のあり方に至るまでの広範な変革ベクトルを持つのに対し、SecondLifeは所詮、バーチャルワールドの一つのブランドに過ぎず、一過性のブームとして消費される運命にある。

最後に付記しておくが、SecondLifeをマジメに医療と結びつけようとしている人達がいるらしく、苦笑するしかない。何か決定的に外しているのではないか?。根本的な勘違いがあるのではないか?。Webから医療を問い直すとすれば、もっと他にやるべきことは多いはずだが。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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