閉塞感からの脱出、Webによる医療再生

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コマンド&コントロール

昨日のエントリーでは、日本医療が官僚統制下における計画経済、つまり社会主義的制度であることを指摘した。これは別に目新しい知見ではないだろうが、改めてこの問題から議論を始めなければ、医療改革など100年たってもかなわないと思う。

社会主義経済であるということは、運用フレームが「テクノクラート(官僚)によるコマンド&コントロール(命令と統制)」であるということ。ソ連や東欧などかつての社会主義体制の閉塞ぶりを想起するまでもなく、これら社会主義的な制度の下では、そもそも改革についての自由な議論も前向きなビジョンも出てくるはずはないのである。

Webと医療

今日の日本医療の強い閉塞感は以上のような事情に由来すると思われるが、実はこの閉塞感を突破する鍵はWebにあるのではないかと以前から考えている。米国のオープン・ヘルスケア宣言やHealth2.0など、昨年暮れから提起され始めた新しい医療改革運動を興味深く見てきたが、これらムーブメントもWebに根ざし触発されながら、さらにリアル医療全体の改革まで視座に納める方向へと発展しているのである。

「患者と医師の関係性」というものを例として考えて見ても、リアルの関係のみであった時代と比べ、そこにWeb空間が新たに勃興することによって、両者の関係性は質的に大きく変わってきている。一般化して言ってしまえば、Webは患者や生活者をエンパワーする方向で従来リアル医療を大きく変える可能性を持っているのだ。

このWebによる医療変革の可能性は、10年ほど前のWeb黎明期においても確かに言及されていたのである。だが、いつしかそのポテンシャルは忘却され、結局「eヘルス」などといって見ても、巨大医療ポータルやパンフレットのような医療機関サイトなど、これも「コマンド&コントロール」の一形態に終わるかのようであった。つまり「Webによる医療変革」という意味では、この10年間は「ナッシング」であった。

だがWebが本来の可能性を再評価される時代が来た。つまり「2.0」であり、それに触発された上述の新しい医療改革ムーブメントが興ってきたのだ。だが、10年前に「eヘルス」など標榜していた人々は、この新しい事態を理解できず、もはや何の意味もない古い「医療情報掲載基準」などをいまだに墨守し、Webの医療変革の可能性を矮小化しているのである。

リアル対Web

日本のように社会主義的な硬直した医療制度の現実に向き合うと、改革の選択肢はほとんどなく、制度設計の自由度も限りなく少なく、新しい製品・サービスを生み出す機会もほとんどないように見える。まるでこの「コマンド&コントロール」体制が、牢固として未来永劫動かないように見えてしまう。

だが、Webという今ひとつの「現実」に視座を移動し、そこから見ると、「リアルの現実」は多くの選択肢の中の単なる一つの「選択された現実」でしかないことがわかる。そしてこれまで、特権的にこの「選択」をしてきたのが官僚であったこともわかる。

「リアル」において「コマンド&コントロール」され逼塞していた変革を希求する精神が、Webで自由を得て、リアルの閉塞を突き破るような新しいサービスを作り出す。それは「患者と生活者のエンパワーメント」という方向を志向している。このことをHealth2.0と呼んでもよいだろう。

われわれはそのような大きな流れに合流していきたいと考える。そのためにまずTOBYOを具現化させなければならない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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