病院評価サイトの現状評価

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カリフォルニア州で先月オープンした病院評価サイト”CalHospitalCompare”については、以前、その概要と問題点をエントリーしてある。その後の状況を見ると、オープン当初は一日3万人程度の訪問者があったものの徐々に減ってきており、現在では一日500人程度であるという。

発展途上の病院評価サイト
“CalHospitalCompare”はかなり本格的な病院評価サイトであるが、どうも生活者に対するインパクトがいま一つ不足しているようだ。このサイトのみならず、現在米国では連邦政府機関、州政府機関、民間などの運営主体による病院評価サイトが乱立している。しかし総じて生活者の利用頻度は低く、盛り上がりを欠く状態が続いているようだ。

これはなぜなのか。米国の議論を見ているとこの病院評価という分野がまだまだ未成熟であり、ユーザーを納得させる利便性の開発が充分ではないとの指摘が多い。特に評価データが充分にそろっていないことが大きい。各サイトはメディケアやメディケイドなどの公的データをはじめ、評価データ・ソースの確保に四苦八苦しているようだ。また、生活者が一番知りたいデータである価格、およびアウトカム(結果)のデータが不十分だといわれている。

しかしながら、「現状はまだ初期段階である」との認識のもとに、この分野が今後大きく改善されていくとの楽観論が多いのは、ユーザーの側に病院評価に対する大きなニーズが存在しているからであろう。

遅れる日本の病院評価サービス

日本の場合はどうか。この病院評価の分野は、明らかに米国よりもさらに遅れている。この春から、自治体がウェブで病院情報を公表することになっているが、これはそもそも「病院を評価し比較する」という機能が弱い。アウトカムデータも公開される見込みはない。

また医療機能評価機構では病院の評価結果を公表しているが、生活者に対して分かりやすい形で情報が提供されているかといえば、まったくそうではない。評価機構のウェブサイトを見れば、はじめから生活者をサイト対象者から除外しているような殺風景さである。つまりこれは「業界内のためのサイト」であるのだ。内部志向で、社会的なコミュニケーションを生み出そうという形跡がない。もともと病院関係者向けの「評価」であるということか。

その他の民間サイトになるともっと貧弱であり、評価データ自体がほとんどない単なる病院検索サイトである場合が多い。とにかく、このような病院検索サイトだけが多数存在するところが、日本におけるWeb医療サービス界の特徴といってよいぐらいである。なぜこうなっているかを考えると、病院選択に役立つ評価情報のデータソースが、ほとんど存在しないからではないだろうか。データがないから、それをアグリゲートするサイトが出てこないのである。手術件数だけで「病院の質」を判定するわけにはいかないだろうし、少ない「患者の声」だけで評価しランキングするわけにもいかない。

日本の医療を具体的に担っている病院や診療所が、そしてそこで働く医療者が、社会的に可視化されていない現状がある。「フリーアクセス」はあるが、選択のためのデータがない。あるいはデータは少ないながらも存在するが、生活者にわかりやすい形で提供されていない。このような現状では、依然としてクチコミが幅を利かせることになる。リアルでもウェブでも。

最近、話題になっている”Yahooワイワイマップ”の「全国ヤブ医者マップ~こんなトコ二度と来るか!~ 」であるが、このような背景から登場しているのではないだろうか。

photo by TylerHowarth

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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