医療変革をめざすHealth2.0

Health2.0_mcl

Copyright 2000 by Scott Shreeve, MD. Made available under the Creative Commons Non-Commercial Attribution 2.5 License

昨年末ごろから、米国におけるHealth2.0の動きを紹介してきたが、春になって徐々にこのムーブメントの全容が明らかになってきている。まずHealth2.0のウェブ上の基地ともいうべきWikiサイト“Health2.0″がオープンした。

HealthCamp

この「公式」Wikiサイトによれば、そもそもHealth2.0というものは、昨年12月にサンフランシスコで開かれたイベント「HealthCamp」における議論の中から生まれてきたとされる。このイベントは一昨年あたりから注目されている”BarCamp”の一環として企画・運営されている。”BarCamp”はシリコンバレーのギーク達の間で最も人気のある有名な技術情報共有イベントであるティム・オライリー主催”FooCamp”を模したものである。”FooCamp”はシリコンバレーのセレブ達中心で、ここに招待されること自体が名誉だとみなされるほど「格」の高いイベントになっている。これに対し”BarCamp”の方は、いわばそのような「上品」な”FooCamp”に対抗するかたちで作られたイベントで、よりコミュニティ性と参加共有性を強めた性格を持っているといわれる。しかしながら、どちらもシリコンバレーにおけるWeb2.0シーンの重要な情報共有・交換の「場」であることはまちがいない。

これら”HealthCamp”に集まった人々が”Health2.0″を標榜することになるが、彼らは昨年秋に”HealthTrain–オープン・ヘルスケア・マニフェスト”を発表したグループとは異なるようだ。このあたり、このブログの昨年末のエントリーで「Health2.0をめぐる論争」と言及しておいたが、同じような志向を持ちながらも、これら二つのグループ間には微妙なニュアンスの差違があるように見える。

新旧マーケティングの差違

だが別に党派やイデオロギーをめぐる対立ではないので、両者間でどんどん生産的な議論をしていってほしい。しかし、少し驚いたのは「Health2.0」を標榜する人たちが、たしかにWeb2.0の影響は認めつつも、単にそこにとどまらず、もっと広い観点から「医療自体を変革することが、すなわち医療2.0である。」という主張をしている点である。(図はHealth2.0の概念図) そして、マイケル・E・ポーターとマイケル・テイスバーグが提唱する”Redefining Healthcare“(医療再定義:価値ベースの競争)をHealth2.0の理論的フレームワークにしていることも注目されよう。

これに対し、オープン・ヘルスケア・グループは、”Cluetrain Manifesto”へのオマージュとしてHealthTrainを提唱したことをみても、デビッド・ワインバーガー、ジョン・ヘーゲル、タラ・ハントらの新しいマーケティング理論家に共鳴しているようだ。(ちなみにタラ・ハントはBarCampの主催者の一人)

ポーターに代表されるエスタブリッシュメント派マーケティングと、ネット経済圏に触発されて出てきたマーケティングの新潮流。どうやらこんなマーケティング観の差違が、Health2.0グループとオープン・ヘルスケア・グループを分けているように思える。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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