Googleマイマップと病院評価

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先週4月4日からGoogleマップスは機能強化され、ユーザーが自分だけの地図を作成・公開できる「マイマップ」機能が追加された

これによってユーザーはGoogleマップスを使って、特定の好きな地点にマーカーを立てたり、写真、ビデオ、コメントを追加したり、また道順を書いたり、周辺地域を塗りつぶしゾーニングしたりできるようになる。それに、この自分で作った地図を公開し、友人・知人と共有できるのである。

従来からAPIを使い、同様の機能をさまざまに実現するマッシュアップ・サイトは存在したが、Googleマイマップの登場は、ユーザーの地図利用を促進し、さらに用途拡大の可能性まで持っている。

医療機関と位置情報

日本でこれまでに開発提供されてきたWeb医療サービスの代表格といえば、まず病院検索サービスになるのではないだろうか。現在、多数のサイトがサービスを提供しているが、その検索手順は大同小異で、所在地(住所)と診療科目を組み合わせて検索させるのが一般的である。

だが、所在地・住所からの検索は往々にして不便だ。自宅からの距離感、方向感覚がつかみにくい場合もあるし、第一、正確な住所特定がメンドウである。それよりは、周辺地図に医療機関をマッピングしてあるのを、ラフに選択するほうが格段に便利である。このように同じ位置情報でも、「住所」よりも「地図」というデータ形式のほうがユーザーに使いやすいが、実際は地図から検索できる病院検索サイトはほとんどなく、ともすると従来のGoogleマップスでの検索のほうが早いし便利であった。

GoogleマップスAPIを使ったマッシュアップ・サービスは、レストラン検索・評価分野などではいち早く公開されていたので、当方でこれを病院検索・評価サイトに応用してはどうかと、一時期かなり真剣に検討していたこともあった。だが、「いずれGoogle本体が乗り出してくるのではないか」との懸念もあり、結局開発に至らなかったが、案の定の今回の「マイマップ」登場である。

問題多い日本の病院評価サービス

病院検索と同時に、クチコミ情報を収集し病院評価サービスを提供しているサイトも存在する。だが、日本のこれら病院評価サービスを見ていると、「統計調査」ということの基本的な理解が不十分であり、まだ本格的なレーティング・サービスを開発しきれていないように見える。

数年前に「患者が選ぶ病院」との触れ込みで、Web患者満足度調査で収集したデータをもとに、広域地区の病院ランキングを発表した企業があった。そして、これをまとめた本が10万部というセールスを記録したのは、まだ記憶に新しいところである。

しかしこの企業の場合、病院ごとの採集標本数を考慮せず「満足度」を算出し、統計的誤差を無視したランキング順位を公表してしまったのである。たとえば、ある病院では100人による評価データ、別の病院ではわずか5人のデータというように、標本数が不ぞろいなのにそれを同一に扱ったために、まったく統計的に意味のない「ランキング」を算出していたのである。

これに似たケースは多い。現在、「クチコミを集約する」との触れ込みで病院評価を公表しているサイトもあるが、これも中身をみるとわずか数人の標本数で評価指標を算術計算している。このような標本数であれば、わざわざ数値化する必要もない。第一、数値化する意味がないのだ。定性情報として利用すればよいものを、グラフで見せたりするのはいかがなものか。統計的な「病院評価」を標榜するのなら、もう少し基礎的な統計理論をきちんとおさえておくべきだ。また、病院側もこのような「病院ランキング」に一喜一憂すべきではないだろう。

Googleマイマップで病院評価

話がそれてしまったが、Googleマイマップはユーザーが治療を受けた病院をマッピングし、そこに体験記や感想コメントを書くことによって、一躍、全国病院評価マップとなる可能性を秘めている。また、Web闘病記にこの病院マップをリンクし公開することも出来る。

そしてやがて大量に作成された「病院マップ」をアグリゲートし、メタデータで分類し、共有するサービスが登場するだろう。Health2.0とは、まさにこのようなベクトルをもったWebでの医療情報利用スタイルである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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