シニア層のウェブ医療情報利用実態

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4月6日付けワシントン・タイムズ紙に、米国のウェブ医療情報実態調査結果が報告されている。調査対象者は米国有権者800人。調査実施期間は今年1月26日-29日。

インターネット上の医療情報に対する関心は非常に強く、そして疑いなく増加している。アメリカ人全体のウェブ医療情報に対する需要は大きいが、シニア層では、いくつかの特別な支援や指導を必要としているかもしれない証拠もある。

まず、医師の診察を受けた後で追加的な医療情報をウェブで調べる人は78%に達している。これらウェブでもっと医療情報を学ぶことに関心と意欲の高い人々は、性、所属団体、イデオロギーなどの属性にかかわりなく広く存在する。

65歳がボーダーライン

だが年齢という属性だけは別である。65歳以上のシニア層は、ウェブでの医療情報利用について劇的に低い関心を示しており、わずか48%がウェブで情報を検索すると答えているのみである。興味深いことに、これらシニア層の次に若い年代層(55歳-64歳)では、ウェブで医療情報を探すと述べている人の数は一挙に増加する。65歳をボーダーラインとして、それ以上の年齢層とそれ未満の年齢層とでは明らかに顕著な差違が認められた。

さらに、他のタイプの医療情報、たとえば医師や病院のクオリティ・データのような情報に対する関心についても質問してみると、ここでもまた全体の大多数82%強がこのような情報がほしいと述べている。しかし65歳以上のシニア層では、この質問に対しても消極的な関心を示している。

一方、インターネットを利用する人の数は、これら65歳以上の間でも急速に増えている。(2000年から2004年の間に50%近く増加)。そして一度インターネットを使ったら、シニア層も若いアメリカ人とまったく同じようにインターネット利用に熱中する。

求められる政策対応

これらの調査結果を報じた上でワシントン・タイムズ紙は、「政策立案者は医療情報技術に関する政策決定をする際、これらの調査結果をよく考慮に入れるべきだろう。医療選択評価ツールへの需要は強く、このことは(医療選択評価ツールに対する)一層迅速な対応が歓迎されるだろうということを示している。(中略)また、政策立案者は、65歳以上の人々の特別なニーズを知る必要がある。」、「短期的には、政策的に特別な手立てや教育機会をこれら65歳以上の人々に提供し、オンライン医療情報技術ツールを利用することに対する、彼らの嫌気を解決することを助けなければならない。だが、医療システムのヘビーユーザーであるこれらの人々は、疑いなく物分りが早いだろう。」としている。

日本のシニア層の状況

日本でも同様の状態が推測される。総務省の「平成17年通信利用動向調査」によれば、65歳-69歳のインターネット利用率は42%だが、これは前年の27.3%に比べ大幅に上昇している。70歳台でも平成16年15.4%から平成17年19.3%と上昇しており、今後、団塊の世代の加齢効果に伴い利用率は一層高まることが予想される。

しかし日本でも短期的には、現在の65歳以上の多数がウェブ医療情報を利用できていない実態が想定され、このシニア層に対するウェブ利用促進をどうするかは、米国と同じく政策課題であるはずだ。急激に高齢社会に突入する日本だが、むしろ高齢者こそウェブ利用が必要なのではないだろうか。ところが今の行政はこれと逆の発想をしており、「シニア=ウェブを利用できない層」との決め付けによって、高齢者のウェブ利用促進という観点を最初から除外しているように見える。

携帯電話の場合、「子供と老人が残された最後の市場」というキャリア各社の市場認識の下に、シニア向け端末、シニア向け料金などが開発されているが、ことPCとウェブでこのような動きが出てこないのが奇妙だ。


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