NEWS:医療機関の患者ポータル開発

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2月22日付ワシントンポスト紙で、米国ノースキャロライナ州のデューク大学が患者ポータルサイトを開設したと伝えている。”Healthview Portal”と名づけられたこのポータルサイトは、同大学傘下の3病院および100診療所で受療する年間40万人-50万人の患者向けに開発したもの。

デューク大学ではこの患者ポータルサイト開設の目的を、「患者に健康情報をもっと自分でコントロールできるようにする」(デューク大学アシフ・アーマド診断サービス部長、情報担当役員)こととしている。サービスの内容は診察予約、医療費支払い、診察・検査・処方箋等の履歴情報閲覧など。また診療所外来患者に対しては診療フォームの事前ネット提出サービスを用意し、診療所での待ち時間を短縮する。さらに今後、電子処方箋、オンライン診察、オンライン・セカンドオピニオンなどのサービスを追加する予定。
HealthView

共同開発

この患者ポータルサイト・システムはデューク大学とIBMの共同開発で、患者向けポータルとしてはかなり大規模なものだが、開発期間はわずか14週間。開発コストは公開されていないが、ITアナリストによれば100万ドル以下の低予算に収まっているようだ。

たいていの医療機関はプロプライエタリ(注)な技術を使っているが、これでは他の医療機関のシステムと通信できない。今回のケースをはじめ今後は、ベンダー各社が協力し共同利用できるシステムを開発し、医療機関は現状システムをリプレースする必要がなくなるという。「われわれは過去のプロプライエタリ・システムから抜け出そうとしている。」(ダン・ペリノIBMヘルスケア事業部長)

これらベンダーの狙いは、先日ブッシュ大統領が「2014年までに米国の全国民の健康情報を管理するコンピュータ・システムを作る」と発表した構想への早期アクションにある。この政府構想で重視されている「システム構築のコスト削減」に対応する実績を作ろうと大手ベンダーはやっきであり、この文脈の中で作られたのが「低予算、短期工期」のこの”HealthView”と言えよう。

現在、全米に存在する病院は6000弱。そのうち,今回デューク大学が構築した患者ポータルサイト”HealthView”と同規模のシステムを構築する予算と技術を持つ病院は300程度といわれている。「医療機関は分割分散状態だ。政府の補助金がなければデューク大学のようなケースは広まらないかもしれない。」 (マーク・ホランド、IDCアナリスト)。「不幸なことだが、医療業界はイノベーションから大きく立ち遅れていると言わざるを得ない」(ダン・ペリノIBMヘルスケア事業部長)

Web2.0はマイクロソフトのようなプロプライエタリ・ソフトメーカーやベンダーに対する挑戦という側面を持っている。”Web as platform”がコンセンサスとなった今日、ヘビーウエイトのシステムではなく、Webベースでオープンソースを使った、ライトウエイト&ローコストなシステムが求められる時代となった。医療機関側もベンダー任せではなく、時代の変化を気づくべきだろう。また、医療機関は看板やパンフレットのようなWebサイトからいい加減卒業して、この”HealthView”のような、実際に患者が「使えるサイト」を開発してほしい。

(注)プロプライエタリ(Wikipediaより)

プロプライエタリ (proprietary) とは独占的な、専属的なという意味である。特にコンピュータ産業におけるハードウェアのアーキテクチャや、ソフトウェアにおけるアルゴリズム、ソースコード等が、非公開若しくは排他独占利用である場合をあらわす。
GNU等のフリーソフトウェア陣営が、商用専門のソフトウェアやベンダー群を指して言及する場合にも良く用いられる。フリーソフトウェア精神に傾倒した人からは、しばしば、「プロプライエタリスト」として非難的な意味を込めて使われることもある。


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