医療サイトの審査・認証とは?

一連の不二家をめぐる騒動では、生産現場のずさんな品質管理が問題となったわけですが、その品質管理を保障する国際規格ISO認証を不二家が取得していたという、なかなかに複雑怪奇な展開を見せたのでした。さっそくISOを国内で取り仕切る財団法人日本適合性認定協会は、不二家のISO認証を審査した民間認証機関に調査を命じ、その結果、不二家のISOは「登録保留」ということになりました。

この件で思ったのは「では、ISOって何だ?」という疑問です。品質保証の認証でありながら、その保障された品質がでたらめであるということは、「認証自体がでたらめだった」か「品質実態を偽装して認証を取った」かのどちらかということになります。また仮に後者の場合であっても、認証プロセスが「品質偽装」を見抜けないほど甘い事実を示しているわけで、これも「認証自体がでたらめ」ということに帰着します。

医療界でもISOを取る医療機関は多いですし、また日本医療機能評価機構の認証を受けるケースもあります。またいずれのケースも、認証取得の事実や認証マークを麗々しくWebサイトに掲出してあるのをしばしば目にします。それらが医療機関の現場改善に役立ち支援するものであるならば、結構なことだと思います。しかしブロゴスフィアではこれらの審査認定が、ある部分杓子定規なお役所の形式主義的傾向を持つものと批判されています。審査・認定・認証などという行為自体が、何がしかの権威や権力を背景にした「お墨付きを与える」行為に他なりませんから、やむを得ないともいえます。しかし、実質を伴わない名目的な形式主義にとどまるなら無用というものです。

ところで医療関連サイトの審査・認証というものもあります。たとえば米国のHON(Health on the Net Foundation)では「健康関連ウェブサイトの情報提示のルール」 をガイドラインとして提示しています。他にもいくつかの団体が医療関連Webサイトのガイドラインを作成しています。また日本にも医療関連Webサイトを審査・認定する団体が複数あります。それぞれ海外の諸団体のガイドラインを参考にして、自前の基準を作成していますが、海外ガイドラインの焼き直しであることは否定できません。

これら日本の審査・認証団体に共通するのは、「Web上の医療情報の不確かさ」、「個人情報保護の必要」、「第三者機関の審査認定が必要」などを根拠として、自分達の正当性を主張していることでしょう。しかし、手短に言えば情報の信頼性を担保するために、「自分達の審査・認証」を受けるのが得だぞと言っているわけです。では、これら団体自身の信頼性は一体、何によって担保されているのでしょうか?。まだISOほどの社会的認知があればまだしもですが、そのISOさえ不二家の件で不信感をもたれているほどですから。それを「第三者機関」といっただけでは、自らの信頼性を担保することにはならないのです。(ちなみに医療界ではこの「第三者評価」という言葉が効くようですが・・・)。
つまり「信頼性」と言ったとたん、それを言う自分自身の「信頼性」を証明しなければならなくなるのです。

ところでこれら「審査・認証」にはお金が発生します。結構高額な料金を取るところもあります。そしてどの団体も資格取得コースを設定しており、これでまた授業料が発生します。またまた、これらの「価格」はいかなる「価値」によって担保されているのでしょうか?。

さて、では医療関連サイトの情報の信頼性という問題を、私達はどこまで厳密に論じきれるのでしょうか。そこにおける中心的な論議は医学情報をめぐってのものになるでしょうが、それでさえ「どの医学情報が正しく、どれが間違っているか」を一体誰が断定できるでしょうか。現代の医学は決して万能ではなく、誰も100%の正しさを断言できるわけがありません。学説は日々更新され、技術はどんどん進化していきます。ある患者の病状に対し、複数の異なった医学的選択肢がありうるからセカンドオピニオンということが成立しているのです。ということは、結局、医学的情報の信頼性といっても「医療者が署名入りで書き、入力日時を記す」というシンプルな形式で事足りるのではないでしょうか。そして、最終的にはユーザーのリテラシーによってその情報は判断されます。つまり、情報ソースとして「医療者、署名、日時」が最低限明記されればよく、それ以上の「信頼性」を判定することはそもそも不可能であるから、「第三者」などが口を挟まないほうが良いのです。

このようにコトをシンプルに考えておかないと、要らぬ「中間項」が介在し、要らぬ手間や費用が発生することになります。日本の「審査・認証」団体の場合、100項目を越えるガイドラインを設けているところもありますが、これは手続きや運用を煩雑にし、「本来不要な仕事を自分達で作りだす」お役人の発想です。無用な社会的コストの発生源です。上記HONガイドラインの8項目に対する賛同を、医療関連サイトに掲出するだけで充分だと思います。

もちろん闘病記サイトはこのような「審査・認定」とは無縁ですが、医学情報を扱う際にはソースを明記する、必ず「自分は医療者ではないので、参考程度に見てほしい」と書いておく、など配慮がやはり必要でしょう。ですが既にほとんどの闘病記では、そのようなスタイルが自発的にできているように見えます。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


医療サイトの審査・認証とは?” への1件のコメント

  1. こんな動きもありますヨ・・・。

    (こちらは、ISOの補完手段としても有効かも?)

    「不二家」もコレをやっておけば、よかったのに・・・。

    キーワードは、「情報の公開」 「トレーサビリティ」 「第三者の視点」の3つ。
    ↓↓↓↓
    http://fsr.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_5649.html

    TVニュースでの「映像」は、こちら。
    ↓↓↓↓
    http://www.youtube.com/watch?v=fa9BwUFMOXo

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