「景観の貧しさ」からの脱出

kanban
以前、「2月からTOBYOアルファ版をリリースします」とこの開発ブログでアナウンスしていましたが、諸般の事情により遅れる見込みです。来月3月中にはアルファ版をリリースしたいと考えています。今しばらく、お待ちください。

Web医療サービスにおける「景観の貧しさ」

このブログを通読していただいている方々には、「TOBYO」がどのような問題意識と背景をもって構想されているか、なんとなく分かっていただけるかもしれません。TOBYOプロジェクトから多少逸脱するような話題も、このブログでは取り上げてきました。これはもともとTOBYOが、改革途上にある日本医療と、「Web2.0」と総称される創発的テクノロジーの両者が交差する地点で成立するプロジェクトをめざしており、広い範囲の議論を土台として構想を進めなければならないからです。

しかし、総花的にあれもこれもと対象や機能を広げると収拾がつきません。おのずからTOBYOが焦点としているポイント、領域は絞られてきます。逆に対象者や対応ニーズを絞らなければ、誰の役にも立たない中途半端なものを作ってしまうことになります。数年前、言われ始めた「eヘルス」から私達は出発したのですが、他の先行ビジネスを横目でにらみながら何か腑に落ちないものを感じ続けて来ました。

医療や健康をテーマにしたWebサイトは現在たくさん存在します。しかしそれらを見回してみると、医療機関検索サービス、健康情報サービスなどに概ね集中しており、大同小異であると言わざるを得ません。医療機関サイトも多数できましたが、診療科目、診療時間など営業情報のパンフレット・看板にすぎず、病気や治療法にかかわる医療情報を配信しているサイトは少数にとどまります。またISP(インターネット接続サービス)系やマスコミ系のポータル(玄関)サイトでは、どこも健康コーナーを設置してますが、それらも健康者向けの一般的な保健情報コンテンツが中心で、医療情報は外部から医療百科事典などを調達している程度。つまり、Web上にはたくさんの医療・健康系サイトがありながら、限られた少数のバリエーションしかないというのが現状です。Web上に病院、診療所の看板がたくさん立てられ、また「健康一口メモ」程度の「読み物」もあちこちに掲出されたけれど、それらがさしてユーザーに役立っているとも思えない・・・・・。私達はこんな貧相な景観をWeb上の医療分野で見続けててきました。

閉塞状況突破へ

以上のような、いわば「Web1.0的景観の貧しさ」とでも言うべき閉塞状況をなんとか破る方法はないものかと、思案してきましたが容易ではありませんでした。そもそも、1.0的なビジネスモデルを作ること自体が、医療分野では非常に難しかったからです。

医療情報サービスの分野では「自前で良質のコンテンツをつくり、固まりとして蓄積し、それをもとにユーザーを囲いこむ」という1.0的なビジネスモデルを多様に開発することすら困難だったのです。なぜなら、医療知識・情報が高度に専門的であることと、各種法規でがんじがらめに規制されていることから、自由な発想でしかも相応のコストでコンテンツやサービスを作れる余地がほとんどなかったからです。「景観の貧しさ」や「バリエーションの貧しさ」の理由はここにあります。一言で言えば「ハイ・コスト&ハイ・リスク」であったのです。かくして、医療機関検索サービスと一般的な健康情報提供サービスが「定番化」したわけです。

しかし、これら閉塞状況を破る方法は次第に明らかになってきています。 これまでの「eヘルス」の失敗の教訓に学び、新しい技術を取り入れ、そして

  • ファットな重装備サイトからアジル(Agil:敏捷)なシンプル機能サイトへ
  • 万人向けサイトから特定対象者向けサイトへ

というサイトコンセプト転換によって「Health2.0」という新しい考え方が生まれました。

TOBYOが目指しているのは「万人向けサービス」ではありません。TOBYOは闘病者のためのサービスです。TOBYOはゴージャスなコンテンツを装備するサービスではなく、闘病者によって生成されたロングテール・コンテンツを共有し活用するためのツールなのです。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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