Web上の医療情報サービス

「インターネット医療」って・・・・・・・

インターネットが出現してからおよそ10年。振り返れば、日本でもかなり以前から「インターネットを医療に活用する」という構想は、さまざまに語られてきました。しかし10年経ってみて、どうでしょうか。「医療分野のインターネット事業が、めざましい成功を収めた」という例を、これまで私たちは寡聞にして知りません。「インターネット医療」などという言葉が提起され、「日本医療に革命を起こす」などと言う人まで現れましたが、その後、杳として成果は見えません。

なぜ「インターネット医療」サービスはうまく行かないのか

「インターネット医療」とか「・・・ヘルスケア」などと、時には華々しく、時には熱を帯びて、さまざまに語られてきた構想が、なぜ思ったほどうまく行かなかったのか。社会と市場に新しい価値を作り出していないのはなぜなのか。私たちはTOBYOプロジェクトに着手する前に、まず、このことを考えました。医療機関、製薬メーカー、機器メーカー、医薬品卸、マスメディア、ISP(ネット接続業)系ポータル、コンサル、制作会社等、さまざまな医療界の関係者や外部参入者が、この間「インターネットを使った新しい医療サービス」をめざしました。それらの結果を改めて分析してみると、次の三点に要約できそうです。

  1. ターゲットと対象ニーズの特定が不明確
  2. Webのパワーとその進化方向を見誤っている
  3. 医療のユーザーである闘病者、生活者が、本当に必要とし、切実に求めている情報を提供できていない

この三点は互いに関連しています。簡単に言うと、1と2が原因であり、3がその結果です。まず1ですが、「誰もが皆、健康に関心を持っている」ということは一般的に真実ですから、ともすると、そのまま「全方位ターゲット、全方位ニーズ対応」と流してしまう例が多いようです。その結果、どこにも焦点を結ばない、誰のためのものかがわからないサービスができ上がってしまっている、と言うことです。

2ですが、 Webが個人をエンパワーするところこそが、従来のマスメディアとの著しい差違であることを見ているかどうかです。「コマンド・アンド・コントロール」(命令と統制)という古いメディアの発想で、上意下達式に情報フローを固定したり、そもそもネットの原理に合わない「規制」を持ち出してみたり・・・・・・・。これらの発想は、個人をエンパワーするWebのパワーを過小評価し、その可能性を閉ざすものです。

そして結果として、3の事態が起きています。これらを検討し、私たちがTOBYO開発の前提として行ったのは、上記3つのポイントに、これまでとは別の、あるいは逆の代案を立てることでした。その結果、ターゲットは闘病者、対象ニーズは闘病生活に役立つ情報、個人のエンパワーメントとUGCを重視、細部まで具体性を持った生きた闘病情報の提供、というシナリオを考えていったのです。そして、「Web闘病記=UGC」というとらえ直しが、TOBYOプロジェクトへと繋がっていったのです。

新しい出発

私たちが、日本の「インターネット医療」を総括していたのと並行して、アメリカでもやはり同じような動きが出てきているようです。過去10年間のインターネットを使った医療サービスの限界や問題を批判し、またHONやURACなど、自主規制団体の「Web倫理コード」類を批判する言説なども、ブロゴスフィア(ブログ圏)に出てきました。
日本でもこの辺りの活発な議論が出てきて欲しいと思います。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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